2012回顧 基地問題/命の二重基準深く刻む


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 米軍基地の過重負担にあえぐ沖縄の負担軽減が叫ばれて久しい。だが、ことしも負担軽減が実を結ぶことはなく、さらに重い負担が沖縄社会に押し寄せている。
 基地問題解決の壁として鮮明な像を結びつつあるのは、沖縄県民の命が明らかに軽く扱われているという二重基準だ。日米両政府による海兵隊の垂直離着陸機オスプレイの強行配備が象徴する。

 仲井真弘多知事、県議会、全41市町村長と議会がこぞって反対するオスプレイが10月、普天飛行場に降り立った。
 選挙を介した間接民主主義で選ばれた首長ら、直接民主主義的手法で10万人超の県民が訴えた県民大会の意思は無視された。普天間飛行場の移設先に浮上した本土自治体の反対の声が即座に反映されるのとは正反対の構図だ。
 一方で、非民主的で差別的な姿勢は米政府にも共通する。
 ハワイでは、オスプレイ配備をめぐり、住民が意見を出せる環境影響評価がなされ、環境保全や騒音に対する懸念が噴き出し、二つの空港で訓練計画が撤回された。
 人が住んでいるわけでもないカメハメハ大王の生誕地の遺跡が、オスプレイの下降気流で悪影響を受けるという訴えにも、米軍は耳を傾けた。驚くべき二重基準だ。
 米本国では許されない基地運用が沖縄でまかり通る。ウチナーンチュと、米国民、本土の日本国民の命の重さは違うのか。差別的な基地運用は、国民の生活を守る術を持たず、軍事が優先される日米地位協定の不備と直結している。
 だが、政府は日米地位協定の改定に背を向け続け、県民の反基地世論の高まりを下支えしている。
 オスプレイ配備から半月足らずで、米海軍兵による集団女性暴行致傷事件が起きた。後を絶たない米兵事件に、県民は業を煮やしている。沖縄には2万人を超える米兵が居座り続ける。兵員数を大幅削減しない限り、統計学的に新たな県民が犠牲になる悪循環は断てまい。
 軍事優先の陰影は陸上自衛隊の与那国島への配備問題にも浮かんだ。防衛省は島しょ防衛を名目に軍事的合理性の本格論議が乏しいまま、配備を推進している。島の自立の在り方を含め、賛否を問う住民投票は不発に終わり、町民間に深刻な亀裂を残してしまった。
 自衛隊が米軍基地を共同使用するケースも急増している。米軍との軍事一体化に警戒の目が必要だ。