県人口増計画 子育て世代の支援強化を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 人口はその地域の活力源であり、将来を切り開く人的パワーだ。最も注目度が高い統計数値である。県は、2013年度に「人口増加計画」を策定する。将来的には現在の140万人から150万人台に乗せることを目指す。

 全国一高い失業率にあえぎつつ、人口が増え続け、若年労働者が多い点を、沖縄の潜在的成長力と位置付ける専門家や企業は多い。25年に県人口はピーク(144万人)を迎える予測がある。人口減への対症療法でなく、住宅など幅広い分野の市場拡大、ビジネスチャンスに結び付く人口増に先手を打って挑む姿勢をまず評価したい。
 仲井真弘多知事は「増えているうちから上向きにもっていくことが、沖縄振興のために重要だ」と指摘している。若年層の高失業率、非正規雇用の増加、離島の過疎化など、横たわる課題を総合的に改善するきめ細かな施策を求めたい。
 少子高齢化社会が到来し、11年は40道府県で人口が減った。増えた7都県で増加率トップは、沖縄の0・59%だった。だが、県内でも、就業率が高い15~64歳の生産年齢人口は3年後の15年を境に減少に転じるとされる。県内総生産や県民所得の低下が忍び寄る。
 県は150万人台達成に向け、(1)子どもを産み育てやすい環境づくり(2)健康長寿対策(3)U、I、Jターン推進(4)離島・過疎対策(5)観光客数増―を施策の軸に取り組む。
 人口増には、子を産み育てる家庭の堅実な収入がまず不可欠だ。裏返せば、しっかりした収入がなく、結婚に踏み切れない適齢期の県民を減らさなくてはならない。
 県内も不安定な非正規雇用率が4割を超えている。人口増は労働力も増やすが、仕事先や所得が増えないと均衡を欠き、失業率を押し上げ、平均所得を下げる。こうした悪循環を防ぐには雇用確保が急務だ。例えば、嘉手納基地より南の基地の大規模返還を、雇用の受け皿として再開発する発展戦略があってもいい。
 夫婦が不安なく子育てできる環境整備も急ぐべきだ。全国一の認可保育園の待機児童数など、課題は多い。父親も母親も育児休業が取りやすく、職場復帰しやすい沖縄モデルを模索してはどうか。
 相互扶助の精神が息づき、「希望と活力にあふれる豊かな島」(沖縄21世紀ビジョン)に近づけるため、県民挙げて人口増に取り組む機運を高めたい。