那覇市中核市へ 円滑な権限移譲へ万全を


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 県都那覇市がことし4月1日から、政令指定都市に準じた権限を持つ中核市に移行する。年明けからは、市泉崎に完成した新庁舎での業務も始まった。
 「新しい器」にふさわしい、新生那覇市の真価がいよいよ問われることになる。地域主権の担い手として自治力の向上を図るとともに、市民本位のきめ細やかな行政サービスの実現を期待したい。

 中核市制度は地方分権の一環で1995年に創設された。現在は人口30万人以上が指定要件で、那覇市の移行で全国42市となる。全国に20ある政令指定都市に次ぐ規模・能力を持つ都市の事務や権限を充実させる狙いがある。
 那覇市は移行に伴い、福祉や環境部門を中心に県から約2900の事務や権限が移譲される。その業務量の4割を占めるのが、市と県が分担していた地域保健サービスを一元化する保健所の設置だ。
 県中央保健所の譲渡を受け、母子保健業務や難病相談、エイズなどの感染症対策などに当たるが、その成果を最大限発揮できるよう、まずは医師確保など体制の構築に全力を挙げてほしい。
 そのほかにも包括外部監査制度の導入、保育所や特別養護老人ホームの認可設置・指導監査、屋外広告物の規制などで特色ある景観形成も推進できるようになる。
 市幹部や職員は、膨大な事務引き継ぎが円滑になされるよう万全を期し、くれぐれも市民生活に混乱を招くことがあってはならないと心してほしい。
 一方、行財政改革では課題も多い。市は、中核市移行に伴う普通交付税の増額で「財政へのダメージはない」(翁長雄志市長)とするが、計画では88人の職員増も見込まれている。新たな財政負担と今後の行革を調和、両立させる道筋を明確に示す必要があろう。
 中核市移行はゴールではなく、あくまでも新生那覇市づくりに向けたスタートと位置付けたい。
 移譲される権限を有効に活用し、いかに特色ある県都那覇市に生まれ変われるか。多様な住民ニーズや社会情勢の変化に的確かつ柔軟に対処するためにも、職員の意識改革とともに、「協働のまちづくり」への一層の市民参画が不可欠となる。
 県内で地域主権を主導する那覇市には、これまで以上に市民の声をすくい上げ、市政に反映させる不断の取り組みを求めたい。