日韓関係修復 歴史を直視し前へ進め


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 安倍晋三首相の特使として韓国を訪れた自民党の額賀福志郎元財務相が朴槿恵(パククネ)次期大統領と会談し、日韓の新政権発足を機に島根県・竹島(韓国名・独島(トクト))問題などで悪化した日韓関係の修復を図ることで一致した。

 ぎくしゃくしている日韓の友好関係を改善方向に導く「半歩前進」として率直に評価したい。
 東アジアの安定へ向け関係改善を求めた額賀氏に対し、朴氏は「歴史を直視しつつ、融和と協力の関係をつくっていきたい」と応じた。
 朴氏の「歴史直視」発言は、李明博(イミョンバク)現政権が民主党政権に求めてきた旧日本軍よる従軍慰安婦問題などの戦後処理を、次期政権も曖昧にしないとの意思表示だろう。
 国際社会は慰安婦問題を「人道に対する罪」と捉えている。首相はこの問題について、日韓の歴史研究の蓄積はもとより、その他関係国の幅広い知見も生かしながら、国際社会との溝を埋めるべきだ。
 竹島問題では、日本政府は「歴史的事実や国際法上も、わが国固有の領土だ」との立場を堅持、韓国側の実効支配を「不法占拠」と断じている。安倍政権は竹島問題をどう着地させるのか、平和的な解決策を早急に具体化すべきだ。
 首相は日米関係を強化し「戦略的外交を大胆に展開していく」との意欲を表明している。しかし、領土問題で実力行使も辞さず―としてきた従来の言動や、「憲法改定」「国防軍創設」などの自民党の衆院選公約が、中国や韓国に警戒感を与えている。戦略的外交の前に両国との信頼回復が先決だ。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)や中国、インドなど計16カ国によるアジア広域自由貿易協定(FTA)締結へ向け注力すべきだ。それはアジア経済のキープレーヤーである日韓両国の責務だ。
 沖縄の日米地位協定改定要求を日米が放置している間に、韓国は韓米地位協定の見直しに成功した。韓国駐留の米軍人・軍属・家族について12種の犯罪容疑で韓国に起訴前の身柄引き渡しが可能となった。安倍首相も韓国を見習い、地位協定改定を米国に求めるべきだ。
 首相は過去の植民地支配に「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」を述べた1998年の日韓共同宣言を思い起こしながら、韓国との歴史・領土問題の平和的解決、未来志向で持続可能な関係の再構築に指導力を発揮してもらいたい。