空自の下地島使用 火種の拡大許されない


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 防衛省は2013年度予算の概算要求に下地島空港の自衛隊活用など南西地域での航空自衛隊の運用態勢強化を模索する調査研究費を盛り込む。与那国島にも陸上自衛隊沿岸監視部隊、航空自衛隊移動警戒隊の配備が計画されており、沖縄の離島を次々と軍事拠点化する政府の方針に強い疑問、危うさを禁じ得ない。

 下地島は長年にわたり、民間パイロットの訓練専用空港として利用されてきた。その根拠は飛行場設置に当たって、1971年に屋良朝苗琉球政府行政主席と日本政府が交わした「屋良覚書」にさかのぼる。
 「日本国運輸省は航空訓練と民間航空以外に使用する目的はなく、これ以外の目的に使用することを琉球政府に命令するいかなる法令上の根拠も持たない」と明記され、事実上、軍事利用を封じている。覚書には「琉球政府が所有及び管理を行い、使用方法は管理者である琉球政府が決定する」ともある。防衛省は「屋良覚書」を尊重すべきだ。
 さらに西銘順治知事時代の79年に県は「軍事目的使用の制限については航空法の範囲内で知事の管理権で可能」という大臣見解を引き出している。
 この趣旨からしても軍事利用が制限されているのは明らかだ。従って、現在は県管理の同空港について、国が県への打診もないまま研究調査費を概算要求に盛り込む自体、越権行為だ。
 防衛省が運用を模索するきっかけになっているのは昨年12月の中国機による尖閣諸島周辺での領海侵犯のようだ。空自那覇基地から戦闘機が緊急発進したが、到着時には領空を出ていた。
 こうした状況を踏まえて至近距離に部隊展開する必要があるとの考えに傾いているようだが、領空侵犯したのは中国軍機ではなく、海洋局の航空機だ。先島に自衛隊の戦闘機を配備すれば、かえって中国を刺激して軍拡競争を招き、紛争誘発の可能性を高めよう。
 安倍政権は防衛大綱と中期防衛力整備計画を見直す方針だ。小野寺五典防衛相は現大綱の「動的防衛力」という言葉を「防衛態勢の強化に直結する感じがしない」と疑問視し、中国への警戒を強める計画にする構え。
 しかし戦争の火種をつくり、拡大しかねない動きは容認できない。安倍政権はあらゆるトラブルの外交的解決こそ注力すべきだ。