仏のマリ空爆 内戦の泥沼化を避けよ


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 西アフリカの国、マリの北部を掌握するイスラム過激派に対し、旧宗主国のフランスが同国暫定政府の要請を受け、11日から連日、空爆を行っている。フランス政府は軍事介入の理由として、欧州に波及しかねないテロの脅威の根絶を掲げるが、戦闘は激しさを増し「対テロ戦争」の泥沼化を危ぶむ声も出始めている。

 女性や子どもなど無辜(むこ)の市民をテロや戦闘に巻き込んではならない。国際社会が「テロ根絶」で連携・協力するのは当然だろう。
 ただ、2001年の米中枢同時テロ後の世界を見れば分かるように、軍事力だけでテロを根絶するのは不可能だ。米英を中心としたアフガニスタン攻撃、イラク戦争でテロの根絶どころか、イスラム過激派を拡散させた側面もある。
 マリでは12年3月に首都バマコで起きた反乱軍のクーデターに乗じて、北部の遊牧民トゥアレグ人の反政府武装勢力が政府側に攻勢をかけ、4月に北部独立を宣言した。その後、地元のイスラム過激派や国際テロ組織アルカイダ系勢力がトゥアレグ人勢力を撃退。北部の「テロの温床」化を懸念し、国連安全保障理事会は12月、国際部隊による軍事介入を承認した。
 バマコでは、4月に暫定政府が発足したものの、12月にディアラ首相が軍に拘束された後に辞任、民政移管が足踏み状態にある。
 マリは「テロの温床」となりかねない危機的状況にある。これを阻止するには、若者がなぜ過激派に同調するかを含めテロの背景にある病巣を取り除くことが肝要だ。
 過激派による政府や市民へのテロは卑劣な犯罪だ。外国軍が主権国家へ介入する事態も異常だ。直ちに主導権をフランスから国連に移し、内戦を収拾するべきだ。
 イスラム諸国には欧米のイスラエル寄りの中東政策に対する不満や憎悪がある。だからと言って、過激派がこれに乗じて、欧米と友好的な政権や非イスラム社会にテロを仕掛けることは断じて許されない。
 国際社会はそろそろ共通認識を持てないものだろうか。軍事力やテロによって、民族・宗教の対立や人権抑圧、貧困問題などの根本的解決、政治の民主化は望めない。力任せの手法は、必ず新たな憎しみ、怒りを生み出すからだ。
 過激派にテロの無意味さを説いて武装解除を促すなど、緻密な出口戦略が必要だ。国連の出番だ。