787運航停止 安全確保に総力を挙げよ


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 何にも増して安全性が最優先される航空機にあって、極めて深刻で憂慮すべき事態と言える。
 トラブルが相次ぐ米航空機大手ボーイングの最新鋭機787について日米の航空当局はそれぞれ航空会社に運航停止措置を命じた。

 日米当局はじめ、ボーイング社や関係企業は、不具合の原因究明を急ぐとともに、徹底した安全確保に総力を注いでもらいたい。
 787は燃料漏れや出火、ブレーキ不具合などのトラブルが昨年秋ごろから続発。16日には、全日本空輸便が飛行中に発煙し、高松空港で乗客が緊急脱出する事態に陥り、国土交通省は事故につながりかねない「重大インシデント」と認定した。
 相次ぐトラブルについては当初、国交省や専門家からは「新型機ゆえの初期不良ではないか」との見方があった。結果的に楽観的に過ぎ、分析が甘かったと指摘せざるを得ない。こと運航停止に至っては、予断や悠長な対応は許されないと強く認識すべきだ。
 「ドリームライナー」の愛称を持つ787は、高い燃費効率や長い航続距離を売りにする次世代中型機だ。機体構造物の35%を日本企業が手掛ける「準国産機」で、機体開発に参画した全日空が2011年秋に世界で初就航させた。
 それだけに787の続発するトラブルは、ボーイング社のイメージ低下にとどまらない。国内メーカーの製造技術に対する信頼に直結し、このままでは国際競争力さえ失いかねないからだ。
 これまでに世界の航空会社は約850機を発注し、既に8社に計50機が納入されている。運航停止の影響は日米にとどまらず、世界規模で波及している。関係の深い日本の責任は極めて重大だ。
 世界の航空市場では、ボーイング社と欧州大手のエアバス社が激しい受注競争を繰り広げている。787は試験飛行段階から不具合が見つかり納期が再三遅れるなど、当初から安全性を不安視する声があったのも事実だ。
 787の相次ぐトラブルは、航空機に対する信頼が揺らぎかねない危機だと日米の関係者は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。基幹システムや構造など設計の見直しが必要ならば、何ら躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。人命に関わる安全を最優先し、厳正かつ迅速に対処してもらいたい。併せて利用者の不安を解消するため、積極的な情報公開も求めたい。