邦人人質事件 断じて許せぬ卑劣な犯罪


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 卑劣な犯罪を断じて許せない。アルジェリアの天然ガス施設をイスラム武装勢力が襲撃し、日本人駐在員3人を含む9~10カ国の41人が人質として拘束された。

 17日深夜までの外電によると、アルジェリア軍が人質事件の現場を攻撃したが、人質の安否については脱出、死亡の情報が錯綜(さくそう)している。
 日本政府は引き続き人質の人命第一で情報収集を強化し、関係国と共に無事な解決へ全力を挙げてもらいたい。
 犯行を行ったのは国際テロ組織アルカイダ系のイスラム武装勢力だ。「覆面旅団」を名乗り、隣国マリの内戦に介入したフランス軍機の領空通過を、アルジェリア政府が認めたことへの報復と主張した。
 その報復がなぜ、何の罪もない民間企業従業員の命を危険にさらすことになるのか。論理が破綻しており、国際社会の同意は得られず敵意の的となろう。
 犯人側はプラントを占拠し、フランス軍のマリでの作戦停止を要求し、強行突入すれば人質全員を殺すと脅迫している。だがアルジェリア内相は犯人側との交渉を拒否した。
 プラントはアルジェリア治安部隊が包囲。一部の人質は、武装勢力によって爆発物を巻き付けられているという報道もあり、安否が気遣われる深刻な事態だ。
 首謀者は最近まで「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQMI)」に属しており、長年、組織を率いていたというから危険極まりない人物だ。AQMI自体、欧米人誘拐で多くの経験を持つ。突入は大きなリスクを伴う。
 アルジェリアは世界有数の天然ガスや石油資源を抱え、最近注目を浴びるシェールガスの埋蔵も報告されている。潜在成長力が高いから、インフラ技術を持つ日本企業が注目し、2011年6月時点で14社も進出している。
 だが治安は悪化している。砂漠が広がり、国境警備が難しいという事情がある。事実、11年にカダフィ政権が崩壊した隣国リビアから内戦で出回った武器が大量に流れ込んだ。
 今回のプラントも警備を強化していたというが、武装勢力の装備がそれを上回った形だ。海外での企業の安全対策の難しさがあらためて浮き彫りになった。企業の対策には限界がある。社員の命はお金では買えない。同国で事業展開する企業は撤退も検討すべきだ。