日米会談事前調整 普天間「手土産」許されぬ


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 2月にも見込まれる日米首脳会談に向けた外交当局間の事前折衝で、米当局が米軍普天間飛行場移設などで「具体的な成果」を示すよう日本側に求めていることが明らかになった。日本側は米側の意向に沿って動きだしているようだ。米国の言いなりになって、日本が譲歩する対米追従外交が繰り返されるのだろうか。

 普天間移設で「具体的な成果」として考えられるのは、日本政府が県に対して名護市辺野古移設計画の公有水面の埋め立て申請を出すことだろう。県知事、県議会、県内41市町村長の全てが県内移設に反対し、県外・国外移設や閉鎖・撤去を求めている。こうした中、首脳会談に差し出す手土産として埋め立て申請に踏み切れば、沖縄世論を敵に回すことを政府は自覚すべきだ。
 安倍晋三首相はアジア太平洋地域で台頭する中国や拉致・ミサイル問題を抱える北朝鮮をけん制するため、日米同盟深化を外交戦略の要と位置付けている。衆院選の公約でも自民党は「日米同盟強化のもと、国益を守る、主張する外交を展開する」ことを掲げている。
 しかし実際は日米同盟を大切にするあまり「沖縄益」を犠牲にし「主張する」どころか米側には迎合するだけの「対米従属国家」に成り下がっている。
 自民党は公約で沖縄の負担軽減の実現もうたっていたはずだ。しかし実際は今年夏には普天間飛行場に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが新たに12機配備され、嘉手納飛行場にも米空軍CV22オスプレイ配備の可能性が出ている。軽減どころか基地機能強化ばかりが進んでいるではないか。
 又吉進知事公室長が先日、米国を訪れて、米政府高官に仲井真弘多知事のメッセージを携えて「普天間の県外移設」を直談判した。自民党政権誕生で、県が移設容認に転じるとの米側の誤った認識を打ち消す意味でも意義深い取り組みだ。米側は辺野古移設の加速化を求めるのではなく、こうした地元沖縄の声を真摯(しんし)に受け止めることこそ必要だ。
 岸田文雄外相が19日未明にもクリントン米国務長官との初会談に臨む。2月中の日米首脳会談実現の調整を進めるようだ。外相は米側に対して日米関係への不信感を高める埋め立て申請の約束ではなく、沖縄の県内移設反対の声こそ伝えるべきだ。公約に掲げた「主張する外交」を実践すべきだ。