日米外相会談 危うい国民不在の「同盟」


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 日米外相会談で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設推進方針があらためて確認された。2月に見込まれる日米首脳会談へ向けた地ならしとみられるが、これは沖縄の県内移設反対の民意を顧みない暴挙と言わざるを得ない。

 クリントン米国務長官は記者会見で普天間代替施設建設の作業を含め「在沖米軍再編の進展に自信を持っている」と強調した。同氏の「自信」発言は沖縄の現実を無視し、県民の尊厳を著しく傷つけるもので到底容認できない。
 岸田文雄外相は「沖縄の負担をいかに軽減していくかという方針の下で在日米軍再編を進めることが重要だ」などと応じた。県民が納得しない日米合意に固執し、どう負担軽減を図るというのか。
 尖閣諸島問題について、クリントン氏は日本政府が主張する「領有権」には言及せず、日米安全保障条約の適用範囲と明言。その上で「日本の施政権を一方的に害するいかなる行為にも反対する」と中国側をけん制し、「平和的手段で解決するため、日中双方の新しい指導者が良好な関係で対話してほしい」と解決を促した。
 米国は尖閣諸島の「領有権」について日中双方に中立的だ。にもかかわらず岸田外相は「米国の姿勢を評価する」と応じた。日米の“蜜月関係”復活をアピールしたのだろうが、見方が身勝手に映る。
 辺野古移設については、仲井真弘多知事が事実上不可能との立場を鮮明にし、県内41の全市町村長が県内移設に反対している。
 日米は場当たり的な“点数稼ぎ”はやめて非民主的な日米安保政策の過ちこそ認めるべきだ。辺野古移設に向け埋め立て申請を含む作業の加速を申し合わせたとの観測も流れる。事実ならいかにも強引だ。求められるのは中長期的展望で日米関係やアジアの安全保障環境を正常化、安定化する、大局的な判断ではないのか。
 日米は、軍事力を拡大し台頭する中国に対抗して防衛力をより強化する方針。F35や空軍CV22オスプレイなど最新鋭装備の沖縄配備の検討も活発化している。
 この調子で日本は今後、中国に対抗し年間5兆円弱の防衛費を数倍に増やして軍事大国となるのか。だが軍事大国化の国民合意はない。首脳会談の成果を焦るあまり「軍事同盟」が先走ってはならない。「平和国家」の看板が泣く。