アルジェリア事件 人命優先を貫きたかった


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 アルジェリア人質事件は発生から4日目で最終的な軍事作戦が終了し、イナメナスのガス田施設は制圧された。しかし、多くの人質の命が失われ、複数の日本人の安否も依然不明のままだ。

 生存に関して「厳しい」との情報もあるが、無事であることを祈りつつ早急な安否確認を望みたい。
 詳細は不明だが、軍事作戦の発端は武装勢力がプラント爆破に失敗し、人質を殺害し始めたためとも言われる。一方で、人質の救出というより武装勢力の制圧とガス田施設の被害を避けるためという側面も色濃い。人命優先を貫いてほしかった。
 テロと長年対決してきたアルジェリアは「テロリストとは交渉しない」との姿勢に徹した。欧米も表だった批判を控えた。しかし、自国だけではなく、人質の国籍は10カ国を超える。関係国に伝えることなく軍事作戦に踏み切ったアルジェリア政府は、自国の論理ばかりを優先させたとの批判を免れない。多大な犠牲を出したことを深刻に受け止めるべきだ。
 その上で事件の詳細を明らかにし、各国に対し安否確認への協力、被害の補償に応じるべきだ。
 アルジェリア政府は解決に向けて他国との連携を拒否したが、残念だ。アフリカでの植民地支配、宗教上の対立とも関係がない日本が、事件解決に果たせる役割もあったのではないか。
 人質の安否に関して情報は錯綜(さくそう)し、日本政府は欧米頼みの情報収集に終始した。旧宗主国のフランスや、ガス田施設開発の中心的役割を担う英国企業を通して英国政府に情報が集まるのは理解できる。だが、日本政府の情報収集の甘さは否めない。大使館は政府側と親密な関係を築いていたのか。情報収集能力を検証する必要もあろう。
 武装勢力は事件の理由として隣国マリに対するフランスの軍事介入を挙げた。口実との見方もあるが、いずれにしても遠い国の火の粉が降りかかってきた形だ。
 グローバル化する経済の中で、企業もリスク管理の在り方を今まで以上に問われる。それを支援するため政府はどうすればいいのかも課題だ。
 テロの温床となる貧困、権力の空白地帯の中で野放しの武装勢力や武器密輸に対して、国際的枠組みで対応していかねばなるまい。この事件から何を教訓として学び取っていくか、国際社会の対応も問われている。