物価上昇目標決定 脱デフレへ真価問われる


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 日銀は22日の金融政策決定会合で、物価上昇率を前年比で2%引き上げる目標を新たに導入することを決め、政府との共同声明に明記した。安倍晋三首相の強い要求に押し切られた形ではあるが、日銀にとって大きな政策転換だ。

 今後、政府と日銀はデフレ脱却に向け連携を強化し、金融緩和策と経済政策を遂行する。政府と日銀の間合いの取り方も難しくなるだろうが、日銀の独立性が損なわれることがあってはならない。
 政府と日銀の過度な一体化は、時の政権の失政を結果的に放置して、金融経済の深刻な混乱をもたらす恐れもあるからだ。一方で日銀も、「慎重すぎる」とも言われたこの間の政策判断を検証し、デフレ脱却へ向け中央銀行としての役割を再認識してもらいたい。
 物価上昇目標が設定されたことで、政府の経済政策にも真価が問われてくる。共同声明では、規制・制度改革、税制の活用などの政策を総動員して日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを推進する、とした。
 しかし、上滑りになることは警戒すべきだ。市場では金融緩和や公共事業を中心とした財政出動による景気刺激は一時的なものにとどまるとの見方も根強い。カンフル剤による時限的な回復ではなく、体質改善による、持続的な体力の回復が求められている。
 インフレ目標の設定は、物価が上がる前に物を買うといった消費者心理を刺激する狙いだが、しかしそれだけで消費需要が喚起できるとは思えない。
 消費者心理は、雇用不安や低賃金に加え、少子高齢化や社会保障政策など構造的な問題とも絡む。こうした問題での将来ビジョンを示し国民の懸念を払拭(ふっしょく)しない限り、景気回復はおぼつかない。
 日銀の金融政策転換も、政府の成長戦略の支援があれば、高めの物価上昇率を達成できるとの見解の下にある。成長分野でいかに成果を上げられるかが鍵を握る。
 日銀は今後、期限を定めず金融市場で国債などを銀行などから買い入れ、市場に金を供給する。しかし、国債買い入れを強めすぎると、国の巨額の借金を日銀が肩代わりしているとみられ、信用の失墜で金利が急騰する恐れも指摘されている。
 国の借金が膨らみ、庶民の暮らしは疲弊したままとならないよう、これからが政府・日銀の正念場だ。