基地負担押し付け 国の根っこを腐らすな


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 ささやかながらも安心で安全な日常生活を切に願う―。オスプレイの配備撤回を求める22日の那覇市民大会の決議は、こう結んだ。

 最大公約数にして最小限の県民の願いも詰まっている。安倍晋三首相とオバマ米大統領の心に、市民、県民の思いは届いただろうか。
 県内41市町村の全首長がオスプレイ配備に反対し、全市町村議会が反対決議を行っている。県民世論調査では回答者の約9割が配備に反対だ。県民は墜落事故が後を絶たないオスプレイを、自らの生命と財産への脅威とみている。
 昨年末には森本敏防衛相が退任に際し、米軍普天間飛行場の県内移設の軍事的合理性を否定した。
 安倍首相に尋ねたい。もし東京都内の全首長、都民の9割が反対する政策があったとしたら、異論をはねのけ強行できるだろうか。
 大会決議は、国土の0・6%しかない沖縄に在日米軍専用施設の74%を押し付ける不公平な扱いを、沖縄に対する「差別・いじめ」と表現した。オスプレイ配備後、日米合意の安全対策を守らない米軍の行為を「占領意識、植民地意識でしかない」とも指摘した。
 さらなる基地押し付けで、県民の理解を得るのは無理だ。政府・与党こそ、自らの良心に照らし沖縄の苦難を理解すべきではないか。
 沖縄保守のリーダーで、日米安保を容認する翁長雄志那覇市長は「沖縄に基地負担を押し付けて日本は高度経済成長を謳歌(おうか)した。今後も沖縄に押し付けて日本の発展を考えるのは理不尽だ」と述べた。
 沖縄以外の46都道府県の知事、国民に尋ねたい。沖縄県民は同胞なのか否か。沖縄の過重負担を「対岸の火事」とみるのではなく、自らの問題として悩み、沖縄の民意に沿った基地問題の解決策を共に考えるべきではないのか。
 選挙、議会決議、世論調査などの民主的手続きに裏打ちされた県民要求を無視する政府とは、政治とは何なのか。この国は、根腐れを起こしつつあるのではないか。
 沖縄の異議申し立ては過重負担の事実に根差した「反基地」だが、決して「反米」ではない。両政府はその点を読み違えてはならない。
 県民は戦後68年間、米軍支配に苦しんでいる。そろそろ県内移設によらない普天間問題の解決策で、政治の大局観を示す時だ。これぐらいのことができないのならば、日米は真の友人とは言えまい。

英文へ→Forcing U.S. bases on Okinawa – Desist from eroding the very roots of the nation