対北朝鮮決議 対話のテーブルに戻れ


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 また瀬戸際外交を繰り返すのか。北朝鮮指導部の身勝手な論理に疑問を禁じ得ない。
 国連安全保障理事会は、北朝鮮による昨年12月の長距離弾道ミサイル発射を非難し、制裁強化を伴う決議案を全会一致で採択した。

 北朝鮮は即座に反発して「高い水準の核実験」を実施すると明言。「米国などの敵視政策策動を粉砕する全面対決戦に突入する」と主張している。
 北朝鮮の最高指導者となった金正恩氏は核実験やミサイル発射で緊張感を高め、国際社会の譲歩を引き出すことを狙う瀬戸際外交をまずやめるべきだ。
 安保理決議は、北朝鮮に近い中国、ロシアも加わり、国際社会が足並みをそろえて核開発とミサイル放棄を強い調子で求めている。
 北朝鮮の核実験に向けた準備状況を把握し、危機感を強めた米国は、法的拘束力が強い「決議」に難色を示す中国を説き伏せた。
 決議は、ミサイル発射に携わった朝鮮宇宙技術委員会など6機関などの資産を凍結し、渡航凍結の対象に加えた。ミサイル再発射や核実験に踏み切れば、「重大な行動を取る」と警告している。
 北朝鮮外務省の声明は、核放棄をうたった2005年の「6カ国協議共同声明」が「死滅し、朝鮮半島非核化は終わりを告げ、今後、非核化を論じる対話はない」と挑発している。
 国際社会の包囲網はこれまでより強固だ。非難をエスカレートさせ、実力行使に臨んでも北朝鮮が得るものは乏しい。北朝鮮は核実験をしてはならない。国民のことを思うのなら、即刻対話の場に戻り、平和的解決を模索すべきだ。
 2005年2月に核保有を宣言した北朝鮮は、06年10月と09年5月に地下核実験を実施した。6カ国協議関係者によると、北東部咸鏡北道で地下核実験の準備がほぼ整っているという。
 中国の習近平共産党総書記が、韓国の朴槿恵(パクウネ)次期大統領の特使に対し、「非核化と大量破壊兵器の拡散防止が朝鮮半島の平和と安定の必須条件」と述べている。北朝鮮をどう説き伏せるか、中国の役割は重い。
 日本は6カ国協議の一員だが、存在感が薄い。安倍晋三首相は決議をめぐり、「わが国の考えが多く反映された」と評価しているが、ここで安堵(あんど)するのでなく、米韓中露との連携を密にし、核実験阻止に全力を尽くしてもらいたい。