アルジェリア事件 強硬策は妥当だったか


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 外国人が多数巻き込まれたアルジェリア人質事件は、安否不明だった1人を含め日本人10人が犠牲となる最悪の結末となった。被害者や遺族、関係者の無念とやり切れない思いは察するに余りある。罪のない外国人を標的にテロに及んだ犯行グループへの強い憤りをあらためて深くする。

 16日の発生から1週間余が経過したが、現地からの情報は依然錯綜(さくそう)している。21日にはアルジェリアのセラル首相が外国人人質37人の死亡を発表したが、事件の全容はおろか、軍事作戦の実態や外国人人質の死亡時の状況など、分からないことがあまりにも多過ぎる。アルジェリア政府は、得られた確かな情報を包み隠さずに開示すべきだ。
 日本政府は事件発生直後から、アルジェリア政府に対し、人命最優先で臨むよう求めていたが、軍事作戦は事件発生の翌日から電撃的に展開されるなど、人命が尊重されたとは到底言い難い。
 生存者らが「軍は動く者全てを撃った」と口々に語った内容が事実であれば、アルジェリア軍は犯行グループの壊滅ありきで無差別攻撃を強行したことになり、人命軽視との批判は免れないだろう。
 事件直後からアルジェリアは「テロリストと交渉する余地はない」と強硬姿勢を崩さなかった。だが、催涙ガスの使用など犯行グループを無力化する手段は皆無だったのか。軍事作戦は被害を最小限に抑える方策など十分な検討がなされたのか、疑念は尽きない。
 今回の事件は人命を最優先する人道主義と、「テロとの戦い」を掲げる国際協調の両立という“矛盾”も浮き彫りにした。グローバル化し、かつ局地化するテロの脅威に国際社会はどう対処すべきか。情報収集や分析、テロ対策で各国は連携を深める必要がある。同時に日本政府や日系企業には海外リスクの危機管理が問われる。
 一方、日本政府と被害に遭ったプラント建設大手の日揮(横浜市)は、日本人犠牲者の氏名や年齢を明らかにしていなかったが、菅義偉官房長官は24日、遺体帰国後に公表する考えを示した。遺族や関係者の証言は事件の全容解明に加え、今後のテロ撲滅に向けても不可欠だけに、公表は当然だろう。
 また政府・自民では自衛隊法改正に前のめりの姿勢も散見されるが、事件の背景や現地の安全対策など検証作業こそ急ぐべきだ。