税制改正大綱 踏み込んだ格差是正策を


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 自民、公明両党は2013年度の与党税制改正大綱を決めた。消費税率の引き上げを控え、企業支援や家計の負担軽減策が盛り込まれている。評価し得る改正がある半面、財源確保の説明、低所得者対策の具体的な道筋が後回しにされた印象も否めない。

 法人税減税では民主党が法人税の実効税率を下げた上で東日本大震災の復興増税を課したのに対して、安倍政権は給与や雇用、投資を増やした企業に減税を限った。企業の行動が確実に担保できるなら評価できる。
 このうち従業員の給与を増やした会社に給与増額分の10%を法人税から差し引く制度は、金融緩和による物価上昇に備えた賃上げ誘導策として大いに注目したい。
 価格の高い住宅や自動車の税制面で優遇するのは消費増税の影響を軽減できよう。祖父母が孫に対して教育資金をまとめて贈与すれば孫1人につき1500万円まで非課税とするといった、高齢者から若い世代への資産移転は消費拡大につながる点で期待が持てる。
 一方、自動車取得税の廃止方針が示されたが、代替財源については「地方財政に影響を及ぼさない」との記載にとどめ、具体的議論は先送りされた。2012年度見込みで税収2068億円のうち約7割が市町村の自主財源だ。代替財源が示されず、全国知事会など地方6団体による「地方の声が十分反映されていない」との声明に与党は十分説明すべきだろう。
 また大綱で自動車重量税について「道路の維持管理・更新のための財源」と明記したのは疑問が残る。自民党政権が2009年度に「無駄な道路建設の温床」だとして廃止した道路特定財源とどこが違うのか。族議員の権益だった特定財源が復活するなら、果たして国民の支持を得られるだろうか。
 消費増税の低所得者対策が中途半端な形で盛り込まれたのは残念だ。14年4月からの税率8%時に、一定の所得以下の人に現金を配る「簡素な給付措置」の実施は盛り込んだ。しかし食料品などの税率を低くする「軽減税率」は消費税率10%時点での導入を目指すとしたものの、制度設計は14年度改正に委ねられた。実際に導入するかも不透明なままで、貧富の格差是正に十分配慮されたとは言い難い。
 与党は貧困層拡大に歯止めをかけ、中間層拡大の格差是正の具体策をより踏み込んで展開すべきだ。