山口公明代表訪中 関係改善の好機逃すな


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 公明党の山口那津男代表と中国の習近平共産党総書記が会談し、習氏は尖閣問題をめぐる日中対立について「対話と協議によって解決していく努力が重要だ」と語り、安倍晋三首相との首脳会談に前向きな姿勢を示した。
 冷え込んだ日中関係を改善する好機と捉え、ぜひ実現したい。

 尖閣問題に関して両国ともお互いの主張を声高に言い合うだけでは不毛な争いに終始する。両国とも譲歩できない部分はあろうが、対話や協議できる分野も多いはずだ。まずは対話を積み上げることから始めたい。
 これまで中国側は「漁政」「海監」などの公船を日本領海へ侵入させ、挑発行為を繰り返してきた。非常に強硬だった中国側の姿勢からすれば、明らかに局面が変わった。習氏の発言は現状打開へのシグナルだろう。
 習氏に先立ち、山口氏と会談した王家瑞中央対外連絡部長は「今の指導者が解決できないとすれば後の世代に解決を託すこともある」と問題の棚上げを提案した。
 日本政府は領土問題が存在しないとの立場で、今後双方の溝を埋める知恵が問われる。日中が長い歴史、経済、文化交流で培った結び付きを本気で生かせば、関係改善は可能と信じたい。
 反日デモによって日系企業は中国での経済活動が大打撃を受け、県内でも中国からの観光客が激減した。痛みは中国とて同じだろう。
 尖閣問題に固執し身動きが取れなくなるより、日中共通の利益を追求する戦略的互恵関係を深めた方が、明らかに賢明な選択だ。日中関係を政治的にも強くする、大局的観点に立った交渉が必要だ。
 中国は国内総生産(GDP)が世界第2位、日本は第3位でそれぞれ国際的役割を担う経済大国だ。関係改善に取り組むことは、国際社会に対する責任でもある。
 戦後の欧州統合のけん引役を果たしたフランス、ドイツによる独仏協力条約(エリゼ条約)は調印から50年たった。19条しかない条約は「平和」「友好」といった文言を特にうたってはいない。しかし、年2回の首脳会談、青少年交流機関の設置など両国間のパイプを強化する具体策を並べた。大いに参考になろう。
 領有権に関する主張は違えど、日中関係を深める過程の中から解決する知恵も出てこよう。日中首脳会談に向けた対話のチャンネルを設け、環境整備を急ぐべきだ。