CO2削減見直し 時計の針を巻き戻すな


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 安倍晋三首相は、民主党政権が国際公約として掲げた「2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減する」との数値目標を見直すよう、石原伸晃環境相らに指示した。

 安倍首相はほかに、「30年代の原発ゼロ」を掲げた民主党政権のエネルギー戦略をゼロベースで見直すことも求めた。
 原発依存を前提とした25%目標は、09年に当時の鳩山由紀夫首相が国連の演説で表明し、意欲的な目標だと各国から高く評価された経緯がある。
 福島第1原発事故の影響で、原発の稼働が不透明なことから削減目標の達成が困難視されているのも事実だ。ただ、安倍首相は新規の原発建設を容認する姿勢を示すなど、「脱原発」の方針をなし崩し的に覆そうとしているのは誰の目にも明らかだ。
 仮に日本が原発依存に逆戻りする一方で、温室ガスの削減目標も後退させるとなれば、諸外国の理解は到底得られず、公約違反の批判は免れない。日本の信用は失墜し、国際交渉での発言力が大きく低下することは避けられない。
 新たな削減目標は、今年11月にポーランドで開かれる気候変動枠組み条約第19回締約国会議までにまとめられる見通しだ。
 自民党は昨年の衆院選で、50年までに温室ガス排出量を05年比80%削減する目標を堅持するとしていたが、石原氏は25日の会見で「われわれは掲げてない」と発言し認識不足を露呈した。削減目標を取りまとめる担当大臣として責任ある言動に徹するべきだ。
 電力システム改革についても安倍内閣は、柱となるべき発送電分離や電力小売りの全面自由化などに消極的な姿勢がうかがえる。原発事故前に時計の針を巻き戻すことは決して許されない。
 いずれにせよ国民はもとより、国際社会も納得し得る地球温暖化防止戦略を構築する必要がある。そのためにも、休止している「エネルギー基本計画」の策定作業を直ちに再開すべきだ。温室ガス削減に向けた合理的な目標や計画を検討する上でも、再生エネルギー普及など電源構成の見通しが不可欠だからだ。当然、新たな成長戦略も求められよう。
 削減目標策定に向け、「電力ムラ」「エネルギームラ」を重視する旧態依然とした“自民党的手法”を抜本的に見直し、国民的議論を早急に始めるべきだ。