13年度政府予算/基地と振興策絡めるな 生活・雇用の再生急務

 2013年度政府予算案が決まった。一般会計の総額は92兆6115億円と過去最大級で安倍政権の景気浮揚への意欲がうかがえる。ただ公共事業や企業支援策が優先され、生活・雇用再生が後回しとなりかねない危うさもある。

 内閣府沖縄振興予算案が3001億円と満額確保となり、那覇空港第2滑走路増設事業の工期短縮が認められたことは前進と言える。
 政府内には米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設へ県の協力を得るための政治的配慮を指摘する向きもある。だが「アメとムチ」の手法は時代錯誤だと銘記すべきだ。

緊張緩和策を

 第2滑走路増設の新規事業化は、軍民共用である那覇空港の過密状態、アジア市場をにらんだ航空需要増など沖縄、日本の経済発展戦略を考慮すれば遅いくらいだ。
 あらためて確認したい。自治体の裁量の大きい一括交付金や鉄軌道導入など目玉事業を含め、振興策と基地は別次元の問題だ。インフラ整備は他府県と同様に粛々と進めればよい。政府が基地問題に振興策を絡める従来の手法は理不尽であり、根本的に改めるべきだ。
 防衛予算案総額は11年ぶりの増額で12年度当初比400億円増の4兆7538億円となった。この中には、与那国島への陸上自衛隊の部隊配備に向けた経費(62億円)や、宮古島市の下地島空港への航空自衛隊機常駐を検討する調査研究費(5千万円)、宮古島の地上固定レーダー関連費用(約45億円)なども含まれる。
 尖閣諸島周辺で領海、領空接近を繰り返し、軍備を拡大する中国への対抗措置と言えるが、先島地域へ自衛隊を増強すれば軍拡競争が過熱化し、軍事衝突の危険性がかえって高まる。住民が戦闘に巻き込まれた沖縄戦の教訓に照らしても、先島地域の軍事要塞(ようさい)化は到底容認できない。日中両国は緊張緩和策にこそ知恵を絞るべきだ。
 一方、13兆円を超える12年度補正予算案を合わせた政府の「15カ月予算」は、100兆円を上回る規模になった。補正を含めると、新たに発行する国債は48兆円に上り、13年度末の発行残高は約750兆円に膨らむ見通し。景気回復を優先すれば、「借金大国」化も加速しかねない。
 安倍政権は、財政出動と日銀による大胆な金融緩和、成長戦略を「三本の矢」になぞらえ、デフレ脱却を目指す「アベノミクス」を打ち出している。しかし成長戦略は今夏に策定予定で、このままではアベノミクスの理念とイメージが先行し、その間に国民の疲弊感が増す可能性もある。

検証置き去り

 安倍政権は今回、生活の直接支援を重視した民主党政権の路線を転換し、財源をひねりだした。地方向け補助金を一つにまとめた「一括交付金」を廃止し、浮かせた財源のほぼ全額をインフラ整備費に付け替えた。地方公務員給与を引き下げて地方交付税を減らし、生活保護の支給水準も引き下げた。
 これらの措置は、地方や国民に対する国の財政的締め付けにも映るが、その影響について検証や説明責任が果たされたか甚だ疑問だ。
 半面、今回の予算編成では高校無償化への所得制限の導入や70~74歳の医療費窓口負担の引き上げなど、国民の痛みを伴う方策が今夏の参院選への影響を考慮し、先送りされたとの指摘もある。
 国民に痛みを求める施策は慎重であるべきだが、先送りした上で選挙後に“後出しじゃんけん”のようにして打ち出す姑息(こそく)なことをやってはいけない。
 エネルギー分野では、原発輸出を後押しする調査費や高速増殖炉「もんじゅ」の技術を使った新型炉の開発費を計上。前政権の「原発ゼロ政策」から、明らかに後退した。「フクシマ」の教訓に学ばぬ、不誠実な態度というほかない。
 財政規律の維持と成長戦略を両立できるのか、安倍政権の真価が問われるのはこれからだ。国民の閉塞(へいそく)感をこれ以上増幅させないよう、丁寧な作業を心掛けるべきだ。