安倍首相来県 これが建白書への回答か


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 オール沖縄の東京要請行動で県内首長らが安倍晋三首相に直接手渡した建白書への回答が、これなのか。本当に熟慮したのだろうか。
 安倍首相は第2次安倍内閣発足後、初めて沖縄を訪れ、仲井真弘多知事と会談した。その中で首相は2013年度予算案編成で沖縄側の要望に応えたことを示し、米軍普天間飛行場の辺野古移設推進に理解を求めた。

 オスプレイ配備についても「訓練をなるべく県外へ移す努力をする」と述べるにとどまった。
 振興策と引き換えに基地を押し付ける。安倍首相は、古い自民党の政治手法を復活させるのか。
 首相は、沖縄が振興策で容認に転じると思わない方がいい。先の衆院選沖縄選挙区では自民党候補の4氏も、県内移設反対を掲げて当選した。沖縄は後戻りしない。
 沖縄が訴えているのは、国土面積の0・6%しかない島に過重な基地負担を強い、民意が拒否するものを押し付けるのは差別だ、アンフェアだということだ。
 県民の激しい反発にもかかわらず、オスプレイが強行配備され、米兵による集団女性暴行致傷事件、住居侵入中学生傷害事件が立て続けに起きた。建白書は、こうした米軍の傍若無人な振る舞いや事件事故に苦しむ沖縄の状況に触れ、オスプレイ配備撤回と普天間飛行場の県内移設断念を求めている。
 沖縄の切実な訴えを一顧だにせず、“満額予算”を手土産のごとく誇示し、首相がもし県民の共感を得られると考えるのなら、見当違いも甚だしい。
 首相訪米を前に、米国は同飛行場移設問題で「具体的な成果」を求めているとされる。首相は沖縄を説得できる可能性がないことを米国に伝え、県外移設にかじを切るべきだ。
 知事にも注文したい。国と密室での会談に応じるべきではなかった。「しっかりと意が通じるため」(県幹部)と言うが、同飛行場の移設問題は条件闘争ではないはずだ。交渉の余地ありとの誤ったメッセージを国に与えかねず、全国に対する情報操作に使われる恐れもある。
 もっと指導力を発揮できるはずだ。第三者的な物言いでなく、民意の代弁者として主体的に普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設を求める。政権へ復帰した自民党に対し、もはや県内移設はあり得ないと説得する。それが知事の使命だとあらためて銘記してほしい。