大津いじめ報告書 学校の“病根”なくす契機に


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 大津市の中2男子が自殺した問題で、市が設置した第三者委員会(委員長・横山巌弁護士)は、「いじめが自死につながる直接的要因になった」と明記した最終報告書をまとめた。

 いじめと自殺の因果関係を明確に認定する踏み込んだ内容であり、全国の学校現場や教育行政に大きな影響を与えることは間違いない。後を絶たないいじめや体罰はどうすれば根絶できるのか、社会全体が問われていると認識を新たにしたい。
 第三者委による聞き取り調査は昨年8月から5カ月間に及んだ。延べ56人、95時間を要し、生徒や教員の動きなど丹念に事実関係を積み上げていった。単なる犯人捜しや責任の所在を探るための調査でないことは明らかだろう。
 文部科学省の2011年度調査では、児童生徒の自殺の約6割が「原因不明」とされた。こうしたあいまいな幕引きが再発防止を妨げてこなかったか。全国的な注目を集めたとはいえ、大津の事例は、いじめ調査の在り方に大きな一石を投じたと言える。
 仲の良い友達関係がある日突然、いじめる側といじめられる側に急変し、暴力を伴ういじめはエスカレートの一途をたどる。学校側はいじめを認識できる状況にあったが、漫然と見過ごした結果、男子生徒は屈辱感、絶望感、無力感に陥り、自ら命を絶った。報告書に記された内容は、読む者の胸を強く締め付ける。
 報告書は、組織防衛に走る学校や市教育委員会の隠蔽(いんぺい)体質も浮き彫りにし、「いじめの事実究明を途中で放棄した」と責任感の欠如を批判。特に事後対応で、訴訟をにらんだ法的責任論を重視し、「家庭にも要因」との虚構を作り出した―と厳しく断じた。
 組織防衛の指摘について市教委教育部長は「そんなふうには思っていない」と述べたが、現実を直視すべきだ。再発防止を誓う上でも「息子は学校に見殺しにされた」との父親の言葉を深く胸に刻み込んでほしい。
 繰り返しになるが、大津の事例は特別ではない。報告書の提言にあるように、共同担任制の導入や、教員以外のいじめ対応の専門スタッフの配置、子どもから相談を受け付ける第三者機関の常設など、文部科学省は全国的な対策として積極的に推進すべきだ。教育現場が根源的に抱える“病根”に社会全体で真摯(しんし)に向き合いたい。