北朝鮮核実験表明 国際孤立の過ち犯すな


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 北朝鮮が表明している3度目の核実験をめぐり、情勢が緊迫している。韓国メディアは4日までに、北朝鮮が北東部・豊渓里の核実験場で核実験の準備がほぼ完了したとの見方を伝えている。

 金正恩(キムジョンウン)第1書記が党中央軍事委員会の会議で、「国の安全と自主権を守る上で綱領的な指針となる重要な結論を下した」との朝鮮中央通信の報道を受けて、日本政府内でも警戒感が強まっている。
 あらためて忠告する。北朝鮮は核実験の実施で国際的孤立を深め、国民生活や経済を自ら窮地に追い込む過ちを犯してはならない。
 先月下旬、国連安全保障理事会は北朝鮮による昨年12月の長距離弾道ミサイル発射を非難し、制裁強化を伴う決議を全会一致で採択した。その際、北朝鮮は声明を出し「高い水準の核実験」の実施を明言。核放棄をうたった2005年の「6カ国協議共同声明」が「死滅し、朝鮮半島非核化は終わりを告げ、今後、非核化を論じる対話はない」とも反発していた。
 いかにも感情的だ。北朝鮮は声明を撤回すべきだ。朝鮮半島非核化を目指す6カ国協議の構成国である日米韓中ロの各国は、北朝鮮に核実験を断念させ、協議復帰を粘り強く説得してもらいたい。
 北朝鮮やイランなど核開発に挑む国々は、核を持つ国と持たざる国の不公平を問題視する。その理屈が通り核保有国が次々誕生すれば、人類は核の脅威におびえる暗黒世界に足を踏み入れかねない。
 昨年12月に国連総会が加盟193カ国中174カ国の賛成で採択した核廃絶決議は、北朝鮮による4月の長距離弾道ミサイル発射や核開発へ懸念を表明する一方、「核なき世界」へ向け核保有国に核兵器全廃を促し、核拡散防止条約(NPT)体制の重要性を強調した。その重みをかみしめたい。
 NPTで核兵器保有が認められている米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国も究極の目標である「核なき世界」へ向け、積極的に核軍縮・廃絶に取り組むべきだ。北朝鮮は直ちに核開発を断念し、朝鮮半島非核化への全面的協力に舵(かじ)を切るべきだ。
 金正恩氏が他国を軍事的に挑発し譲歩を狙う瀬戸際外交を改め、その指導力と若い感性を、人権尊重など国内の民主化や国民の生活向上、国家経済の持続的発展にこそ生かすよう、強く望みたい。