中国大気汚染 成長至上主義を見直す時


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 中国政府は1月24日以前の段階で有害物質を含む濃霧に中国全土の4分の1が包まれ、全人口の5割弱の約6億人が大気汚染の影響を受けたと、4日発表した。

 情報開示が遅いし不十分だ。中国環境保護省によると、被害は全国17の省、直轄市、自治区に及んだ。北京は1月で26日間濃霧に包まれた。現時点で全国の7割の都市で大気が環境基準を満たさず、今後も汚染拡大の可能性が高い。
 市民が「やみくもな経済発展の代価」「大気汚染を防ぐ準備をしていない」と怒るのも無理はない。健康被害の拡大が懸念される。汚染物質は中国国外にも拡散している。中国政府は猛省すべきだ。
 汚染原因は、自動車や工場、石炭火力発電などが排出源の、直径2・5マイクロメートル以下の微小粒子状物質「PM2・5」とされる。これは、肺がんを増加させるとも言われる。
 北京では1月12日に1日平均で大気1立方メートル当たり900マイクログラムのPM2・5を記録した。日本の基準値同35マイクログラムと比べると、汚染の深刻さが分かる。
 北京市は103の企業の操業停止や3割の公用車の利用禁止など緊急措置のほか、(1)年内に古い車18万台廃車(2)汚染除去能力が劣る工場の閉鎖(3)暖房燃料に占める石炭の比率低下-などの対策を決定した。各都市も追随するとみられる。目標が達成されるよう、中国政府も強力に後押しすべきだろう。
 総人口14億近くの中国の大気汚染が健康や地球環境に及ぼす影響を考慮すると、国際的な支援が必要だろう。高度経済成長期に蓄積した日本企業の公害対策技術も役立てたい。人道的支援を通じて、日本への汚染拡大も食い止めたい。
 中国は2020年までの所得倍増を目標に掲げるが、ここは成長至上主義を見直し、公害対策と国民の健康を優先すべきだろう。
 国際社会は、1997年の京都議定書が定めた温室効果ガスの削減義務を2013年以降も継続し、米国や中国など批准していない国も含む新たな法的枠組みを15年までにつくることで合意している。
 世界の二酸化炭素排出量の約4割を占める中国と米国はこれまで削減義務化に消極的だった。
 深刻な大気汚染を引き起こした以上、中国は今後、温室効果ガス削減で消極的な姿勢は許されない。国際社会と共に地球環境問題の進展に腰を据えて取り組むべきだ。