生活保護引き下げ 負の連鎖断ち切る施策を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 政府は、生活保護費のうち、食費や衣料費など日常生活に必要な費用を賄う「生活扶助」の基準額を2013年度から引き下げるが、就学援助など他の生活支援制度にできる限り影響させないとする対応方針を決めた。

 初めに生活保護基準の引き下げありきで、泥縄式に対策を講じた感は否めない。ただ、国民の生活保障が“底割れ”する懸念もあっただけに、最低限の措置が確保されるものと受け止めたい。
 生活保護の基準額引き下げは、経済的に苦しい家庭に給食費や学用品代を補助する就学援助だけでなく、住民税の非課税限度額や介護保険料の基準、最低賃金など、多方面に影響が及ぶと懸念されていた。
 貧困問題に取り組む元内閣府参与の湯浅誠氏は、就学援助を受けている156万人のうち生活保護を受けていない人は141万人に上ることを指摘し、「就学援助を打ち切られる人の出る可能性がある」と警鐘を鳴らしていた。
 このように保護を受けていない低所得者世帯全般の負担増に直結することから、野党や受給者らの支援団体などから強い批判があった。政府は何らかの対策を打ち出すことが迫られていたと言える。
 政府の今回の対応方針は、生活保護費削減をめぐる国会論戦で野党の追及をかわし、13年度予算案を早期に成立させる狙いがあるとされる。さらに夏の参院選をにらみ、「弱者に厳しい政党」との批判を封じ込めたいとの思惑も透けて見える。
 場当たり的な党利党略ではなく自公連立政権の生活弱者対策の真骨頂をしっかり示してほしい。
 政府の基準額見直しによる減額は、13年度から3年間で約670億円で、引き下げ幅は世帯平均6・5%となる。自民党が昨年の衆院選で公約に掲げた生活保護費の1割カットよりは下回っているが、生活保護受給世帯の96%で現在よりも受給額が減ることを忘れてはならない。
 政府は受給者ら生活弱者の立場に立ち、基準額引き下げの影響を最小限にとどめ、セーフティーネット(安全網)のほころびをこれ以上広げることのないよう、遺漏なき対策に万全を期してほしい。
 もとより、最低賃金の引き上げをはじめ、自立支援策の強化など、“貧困の連鎖”を断ち切る施策にこそ総力を挙げるべきだ。