オスプレイ意見書 「人ごとの論理」の身勝手


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 「温度差」と呼ぶには生ぬるいほどの深い断絶が横たわっている。そんな感を禁じ得ない。米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に関し、反対の意見書を可決した都道府県議会が一つもないことが明らかになった。

 9府県議会では反対の意見書が提案されたが、その全てで否決された。多くが「国防上の観点」を掲げるが、かと言ってオスプレイを誘致する県はない。英語で言う「NIMBY=Not In My Backyard」(自宅の裏庭には迷惑施設を持ってきてほしくない)の論理そのものだ。
 自ら引き受ける覚悟がなければ、せめて沖縄への配備にも反対するのが筋ではないか。沖縄に痛みを押し付けている間は問題にしない、と言うに等しい。そうした「人ごとの論理」の身勝手、醜さを直視するよう、われわれも根気強く他府県に働き掛けていきたい。
 沖縄以外で何らかの意見書が提案されたのはわずか15府県で、可決は5県議会だけだ。そのいずれもが飛行訓練の地元に与える影響を懸念する内容にとどまった。
 配備反対の否決は、昨年11月の九州市長会での論議をほうふつとさせる。その市長会では、鹿児島県志布志市の本田修一市長が「決議すれば沖縄以外の県に持ってきていいということになる」と述べ、配備撤回決議を葬り去った。
 あきれた言いぐさだが、全国にほぼ共通する心理であろうことは、今回の結果が証明している。そうしたNIMBY論を克服する必要があろう。
 そもそもNIMBYの論理は、迷惑施設そのものは必要という前提の上に成り立つ。しかし海兵隊は強襲や拠点奪取が本来の役割だ。本当に日本に必要な軍なのか。各県議会は米軍が必要という思い込みを排し、思考停止を脱して合理的に判断してもらいたい。
 百歩譲って必要だとしても、在沖海兵隊は普段は東南アジアや豪州を巡回し、各地で共同訓練をしている。7千キロ離れた中東にも派遣された。沖縄でなく本土に置いても機能に大きな変化があろうはずはない。沖縄の犠牲を正当化する「地理的優位性」の理屈は破綻(はたん)しているのだ。
 そうした事情は本土ではほとんど知られていない。ことは沖縄の人々の命と尊厳がかかっており、絶望する暇はない。われわれ沖縄の側もあきらめず丹念に本土へ説明し、理性的に説得していきたい。