春闘スタート 働き盛り世代に目向けよ


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 第2次安倍政権発足後初となる春闘がスタートし、労使交渉の行方が例年以上に注目されている。

 ほかでもない。賃上げをはじめとした労働側の要求に経営側がどこまで応えるかは、デフレ脱却に向けた「アベノミクス」の成否を占うと見られるからだ。
 経団連は賃金の引き上げには強い難色を示し、定期昇給についても凍結、延期の可能性を指摘している。労使の攻防は激しくなりそうだ。
 国内需要を喚起しデフレを克服するには、働き盛りで消費意欲の高い世代の収入を充実させることが不可欠だ。経営環境の厳しさは理解できるが、景気回復を着実に進めるためにも経営側に賃上げで最大限の努力を求めたい。
 こうした中で、ローソンが2013年度から、20代後半から40代の社員約3300人の年収を平均で約3%引き上げると発表したことが関心を呼んでいる。
 賃上げではなく、年2回の賞与での対応ではあるが、年収は社員平均で1人15万円増えるという。中学生までの子どもを持つ社員には、人数に応じて上乗せするという。消費の活性化や子育て支援で一定の効果が期待できそうだ。
 ローソンの新浪剛史社長は、成長戦略を議論する政府の産業競争力会議のメンバーでもあり、率先垂範の意識も働いたのだろう。業績好調の業界なら当然、といった冷静な見方もあるようだが、こうした動きがほかの企業にも波及するのか注視したい。
 自民、公明両党は2013年度の与党税制改正大綱で、従業員の給与を増やした企業に関して給与増額分の10%を法人税から差し引く制度の導入を決めた。ローソンの取り組みはこれに即応した動きとしても注目される。
 安倍政権は金融や税制など経済政策を総動員して企業業績と景気の回復を図る構えだ。しかしややもすると、経営側は業績が回復するまでは従業員への還元はしないとの姿勢がかたくな過ぎないか。
 ローソンのような従業員への利益還元策は、消費者の企業への好感度もアップさせ、さらに企業業績を伸ばし、景気全体も刺激する好循環を生むのではないか。これこそ「アベノミクス」が描く再生戦略だろう。
 本格化する春闘で労使は建設的な議論を展開してほしい。特に、働き盛り世代を支援するような社会的責任を果たすべきだ。