浦添市長に無党派 人に優しい活力ある市政を


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 任期満了に伴う浦添市長選挙は、新人で元NPO法人代表の松本哲治氏(45)=無所属=が初当選を果たした。県内第4の都市である浦添市は、無党派で子育て世代の若き市長を迎えることになる。強い指導力と清新な感覚、難局をはね返す構想力に期待したい。

 松本氏は、既成政党の支持を得ず、「市民が主役の民主主義」「本当の市民主体の政治」などの実現を訴えていた。その勝利は、有権者の「市政変革」への期待の表れであると同時に、既成政党に対する不満の表明でもあろう。
 選挙戦を戦った3氏や各政党、支持団体は選挙結果をきちんと総括し、浦添市の地方自治や政党政治の信頼回復につなげてほしい。
 大きな争点の那覇軍港移設問題で、松本氏は「受け入れ反対、移設なき返還を求める」立場を前面に打ち出した。先月、翁長雄志那覇市長が浦添移設と切り離した那覇軍港の早期返還要求を表明したことを受けて、軍港の浦添移設へ反対姿勢を鮮明にした。
 日米合意見直しを迫る対政府交渉は今後、困難も予想される。党派を超えた市民党的な取り組みで公約を実現できるか、新市長は戦略構想力と実行力を問われよう。
 浦添市が推進してきた西海岸開発埋め立て事業について、松本氏は「ゼロベースで議論が必要」と、見直しを提起。具体的には、既に埋め立てが完了した米軍牧港補給地区の後背地18・3ヘクタールに「世界有数のホテル誘致」を掲げ、その後の開発については、自然環境を観光に生かすため「海岸を埋め立てない」との考えだ。
 政策の軌道修正には市民の後押しが不可欠だ。松本氏は自らのビジョンとその根拠について、説明責任を果たさねばならない。
 格差社会が深刻化し、就職、結婚、子育てが多難な時代にあって、松本氏は子どもの人権を尊重・擁護する「子ども条例」の制定をはじめ、子育て支援策を積極的に打ち出した。その姿勢を評価したい。気掛かりなのは、対立候補が厳しい財政事情を理由に困難視した「学校給食費無料化」について、松本氏が明確に「賛成」とした点だ。財源や施策の優先順位をめぐり、緻密な作業を求められよう。
 市政運営は「願望の羅列」では済まず、財源と市民の支持が不可欠だ。それを銘記し、人に優しく、活力のある市政を築いてほしい。