介護施設火災 万全な防火対策を急げ


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 高齢者が暮らす施設をまた悲劇が襲った。長崎市の認知症グループホーム「ベルハウス東山手」で火災が発生し、4人が死亡した。国は過去の大規模火災を教訓に防火設備の普及を進めていた。しかし対応は後手に回り、事故を食い止められなかった。対策や規制は極めて不十分なまま放置されていたと言わざるを得ない。

 介護施設の防火対策は2006年に7人が死亡した長崎県大村市のグループホームの火災がきっかけだった。09年の消防法改正で延べ床面積275平方メートル以上の施設にはスプリンクラーの設置が義務付けられた。
 しかし札幌市で10年に7人が死亡する火災が起きた認知症グループホームは延べ床面積が250平方メートルで、設置義務対象外だった。今回火災があったベルハウス東山手も約270平方メートルで設置義務の面積にわずかに届いていない。
 長崎市は設置を指導していた。しかし「法的義務がない」ことを理由に運営会社が設置を拒んでいた。規制の不備が明らかで、国は多くの犠牲者が出ている事態を重く受け止める必要がある。
 ほかにも問題はあった。ベルハウス東山手には防火扉がないなどの欠陥があった。建築基準法違反に当たり、市が10年に2度にわたって指導していたが、運営会社は対応しなかった。法律違反の状態が2年以上放置されており「指導しっ放し」という行政の在り方も問われよう。
 事故発生を受け、新藤義孝総務相はスプリンクラーの設置義務対象外の小さな福祉施設にも設置義務を検討する考えを示した。当然、義務化を急ぐべきだろう。
 厚生労働省も10年から設置を後押しする補助金支給の対象を義務基準未満の施設にも広げたが、利用は641件、計約14億円にとどまっている。財政的な余力がない小規模施設が多いため、自己負担金が用意できず、利用が広がっていない。県内の認知症高齢者グループホーム83カ所のうち、補助金を受けて設置したのは48カ所だ。
 グループホームは高齢者や障がい者が介護を受けながら、少人数で共同生活を送る施設だ。「火災弱者」ともいえる入居者が身を寄せる施設は、一般施設より手厚い防火対策が必要だ。国は原則として全施設にスプリンクラーの設置を義務付け、補助金充実など経済支援などで完全設置を急ぐべきだ。