米兵新指針 危機感なき小手先の変更だ


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 規定を緩和していながら「犯罪をゼロにするために見直した」と公言する。この論理矛盾ぶりにはあきれるしかない。

 在日米軍司令部は、勤務時間外行動を規定する「リバティー制度」の新たな指針を発表した。新制度は、基地外での飲酒を午前0時から同5時まで禁止したほか、軍曹階級相当以下の兵士は同時間帯で基地外や民間居住地への外出を禁止した。昨年10月に発令した午後11時から午前5時までの夜間外出禁止令の時間帯を緩和し、これまで禁止してきた自宅以外の基地外飲酒も時間を制限して認めた。
 これほど県民を愚弄(ぐろう)した指針があろうか。続発する米兵の事件事故には、何ら歯止めがかかっていない。行動をさらに厳しく規制するならまだしも、まさに現状に逆行する対応と言わざるを得ない。
 米軍は、従来からあったリバティー制度の措置では、適用する兵士の階級を引き上げたことなどで、規定を厳しくしたと強調している。しかし、階級によって区別する理屈が分かりにくい。指導的立場にある兵士が飲酒運転で逮捕されたばかりでもある。新指針を規制強化というなら、あまりに危機感を欠いている。
 新指針は、各軍が暫定的に取ってきた全ての措置に取って代わるという。今も事件事故が相次いでいる現状を考えれば、小手先の数字の修正にすぎない制度変更に、ほとんど効果は期待できないだろう。
 そもそも、4カ月にわたる夜間外出禁止令は一体何だったのか。これほど兵士に順守されない軍令があっていいはずはない。各兵士が米軍施設内や基地外の住宅内にいるのかさえ確認していない点からも、実効性を伴わない見せかけの対策だったといえよう。
 新指針にある「過去12カ月の間に性暴力防止と対応訓練、日本教育訓練をする」との内容も異様だ。数回の“道徳教育”なのか、繰り返し訓練するのかがよく見えない。それ以前に、兵士は、沖縄が植民地ではなく米本国と同様に法治国家であることを分かっているのか。
 米軍は基地ゲートでの抜き打ちの飲酒検査をするとしているが、やるなら徹底して出入りをチェックし、外出禁止措置が十分機能しているか情報開示をすべきだ。県警も基地周辺での検問を実施するなど取り締まりを強化し、米軍に綱紀粛正を強く促してもらいたい。