日米首脳会談 民意無視の惰性なくせ


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 安倍晋三首相とオバマ米大統領は22日、日米首脳会談を米ワシントンで行う。核実験を強行した北朝鮮への対応が中心議題となる。米軍普天間飛行場返還など懸案も多い。両首脳は、国民や過重負担に苦しむ県民の信頼に根差した、日米関係を再構築すべきだ。これを自らの歴史的使命と心得たい。

 北朝鮮は国際社会の非難を受け入れておらず、新たな核実験や長距離弾道ミサイル発射実験の懸念が拭えない。対抗措置として、日本政府は国際金融市場から北朝鮮への資金流入を遮断する厳しい制裁を視野に米国との連携強化を目指す。今のままでは制裁は不可避だ。
 北朝鮮は、金正恩(キムジョンウン)体制になっても他国を軍事挑発し譲歩を狙う「瀬戸際外交」を踏襲している。自国民のことを思うなら制裁の具体化前に核開発を放棄すべきだ。
 両首脳は、普天間飛行場の名護市辺野古移設計画や米海兵隊輸送機MV22オスプレイ配備の撤回についても真剣に話し合うべきだ。
 1996年の普天間返還合意から17年。この間、日本政府の閣僚が知事に県内移設への理解を求める沖縄詣を繰り返している。もう無意味な“儀式”はやめにしよう。時間を空費し、これ以上、県民を危険にさらしてはならない。
 認識を改めるべきは、辺野古移設の軍事的合理性を説明できず、沖縄の民主的要求を理解しようともしない、日本政府の方である。
 県議会議長や県内41市町村長らが先に首相に提出した「建白書」は、普天間の閉鎖・撤去を求めた。事の重みを知るべきだ。政府に染みついた対米追従、民意無視の体質こそ、日米関係を損ねている元凶だと気付いていいころだ。
 歴代首相は避けたが、安倍首相は民意に反する普天間県内移設の見直しをオバマ氏に提起してほしい。それでこそ民主主義国家だ。
 尖閣諸島問題について米国は直接の当事者ではないが、日中の良き仲介者として、武力衝突を回避するメカニズム強化など外交的解決を側面支援してもらいたい。
 アジア太平洋戦略を重視するオバマ氏は環太平洋連携協定(TPP)へ日本の参加を迫り「同盟深化」を求めるだろう。首相は国民合意のない代物について安請け合いは禁物だ。憲法上の制約や国民の利益、東アジア地域の真の平和と安定を念頭に、できること、できないことを慎重に判断すべきだ。