移植希少種枯死 着陸帯建設中止が最善だ


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 台風が襲来する沖縄で、軍事優先をあからさまにして、野生の希少な植物を移植すること自体に無理があることが示された。

 米軍北部訓練場に建設が予定される海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが使う離着陸帯をめぐり、沖縄防衛局が予定地に生えている希少な植物を別の場所に植え替えたが、事実上失敗した。
 沖縄本島と周辺離島を飛ぶオスプレイの危険性に加え、着陸帯建設が貴重な希少種の生息環境を危うくする事実は重い。県民の平穏な生活をむしばむオスプレイが、豊かな自然も損なうことが鮮明になった。
 これ以上、無理を重ねることは無益である。日米両政府は直ちに県内配備と自然を壊す可能性が高い着陸帯建設をやめるべきだ。
 防衛局は北部訓練場内で、ヤンバルクイナが息づく豊かな森を切り開いたり、土地を造成して、直径75メートルの離着陸帯を四つも建設する計画だ。東村高江では地域住民の強い反対を押し切り、建設を強引に進めている。
 建設中の地区で、2007年7月に希少植物11株を周辺に移植したが、4年2カ月後には64%の7株が枯れた。生存率の低さが際立つ。別の地区では、移植した計41株のうち、11年6月から「良好」が26株から12株に激減していた。
 防衛局は「一部が枯死した原因」に、台風で葉が落ち衰弱したことや表面土壌が雨で浸食されたことを挙げているが、苦し紛れの説明に映る。沖縄に頻繁に襲来する台風が原因なら保全は困難だろう。
 64%に上る割合を「一部」とは言わない。自然保護の危うさを示す厳然としたデータを得たのに、防衛局が大規模な森林伐採を伴う軍事施設建設を優先して矮小(わいしょう)化することは許されない。
 防衛局は「最善の保全措置」に移植を挙げるが、それを言うなら着陸帯建設の中止こそ最善だ。
 普天間飛行場の返還・移設問題でも、防衛局の対応には疑問が付きまとう。環境影響評価書の中で、防衛局は絶滅の恐れがあるウミガメが移設予定地の海岸に頻繁に上陸していることを確認していた。
 希少植物の移植と同様、情報公開請求を受けるまで事実を明らかにしようとはしていなかった。
 オスプレイ配備を含め、日米の計画に都合の悪いデータは伏せているようでは県民の不信感はますます増幅するばかりだ。