2013年度県予算 戦略に実効性を持たせよ


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 県の2013年度当初予算案が決まった。一般会計総額は前年度比2・7%増の6988億円で、復帰後最大の規模である。

 2年目となる沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)の実現に向け、ハード、ソフト両面で戦略性を意識した編成に映る。問題はその戦略性に、どれだけ実効性を持たせられるかだ。
 予算戦略の基軸の一つになっているのが、沖縄振興計画で掲げる「沖縄らしい優しい社会の構築」だ。
 安倍政権は公共事業費拡充や生活保護基準引き下げに見られるように、政策の比重を「人からコンクリート」に移している。主客転倒の感はあるが、国の関与が弱まる分は自治体が補うしかない。
 その意味から、被虐待児童やその家庭、ひとり親家庭に目を向けるなど、子育て支援策を強化拡充する施策は大切にしたい。「離島児童・生徒支援センター(仮称)」の設立など、離島住民や教育を重視する施策も評価できる。
 「強くしなやかな自立型経済の構築」に向け、産業振興分野を充実させたのも予算案の特徴だ。新規の航空機整備基地整備事業をはじめ、IT企業集積を図る「クラウド・データセンター」や国際物流拠点産業集積地域那覇地区(旧自由貿易地域)の拡張整備の継続事業などにそれは読み取れる。
 ただ、沖縄の拠点化を意識した企業誘致、施設整備だけでなく、海外展開する企業の支援などにも目配りする必要があろう。
 2025年の144万人でピークを迎えるとみられる県人口について、県は150万人台に乗せるための人口増計画を13年度に策定するが、その実現にも子育て環境の整備と雇用創出は鍵を握る。13年度予算はその布石でもある。
 2年目となる国の一括交付金1613億円はハード、ソフト合わせ98%を盛り込んだ。ニーズに合った活用が期待できるが、1年目の使途や成果についてはしっかり検証し、教訓を今後に生かす必要がある。
 予算案で収支不足は174億円に上り、県財政の厳しさは変わらない。無駄、あるいは重複感の強い事業はないか、行財政改革は徹底されているかなど、点検が必要なのは言うまでもない。
 県の戦略と実効性とともに、県議会のチェック機能も問われる。中身の濃い審議を展開し、県民生活に資する予算を確立してほしい。