中国大気汚染規制 環境問題に本腰入れよ


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 微小粒子状物質「PM2・5」を原因とする大気汚染の深刻化を踏まえ、中国政府がガソリンや軽油など自動車燃料の環境基準を日本や欧州連合(EU)並みに厳しくする方針を決め、国有石油企業に品質向上を急ぐよう指示した。

 大気汚染の影響は日本や韓国などにも波及しており、この方針決定は遅きに失した感を否めない。
 国内外の汚染拡大阻止へ向け、中国政府は考え得る政策を最大動員すべきだ。今回の石油企業への指示は、その第一歩にすぎない。
 中国政府は自動車燃料の新基準を2017年末までに中国全土で適用し、PM2・5の原因である硫黄を削減する考えだ。
 中国では有害物質を含む濃霧でこれまで約6億人が影響を受けたとされる。PM2・5による健康被害への懸念は、中国はもとより周辺国でも強まっている。中国は自動車燃料の新基準の全国的導入まで約5年の猶予期間を設けたが、これはあまりに悠長だ。
 中国政府は規制強化で生産設備の大規模改修を迫られる石油企業の負担をおもんぱかっているのだろうが、この期に及んで経済優先、国民の健康後回しでは、本末転倒のそしりを免れない。規制強化への対応は早いに越したことはない。
 中国の自動車保有台数は右肩上がりに増え、11年末には1億台を突破したというのに、これまで車の排ガス規制は手つかずだった。
 中国政府は現在、自動車燃料の硫黄含有量の上限値を150ppmとする、「国3」と呼ばれる環境基準の燃料の使用をほぼ全域で容認。日本とEUでは10ppm。米国では軽油15ppm、ガソリン30ppmで、中国の規制は5~15倍も緩い。規制強化は不可避だ。
 工場のばい煙や石炭火力発電への過度の依存、黄砂の原因である砂漠化の進行など、中国には深刻な環境問題が山積している。
 大気汚染対策として、北京市が環境基準を満たせない古い車の廃車、汚染除去能力が劣る工場の閉鎖、暖房燃料に占める石炭の比率低下を打ち出すなど、環境対策は一部自治体で緒に就いたばかりだ。
 こうした中、高度成長期に公害を克服した日本の環境技術を今こそ生かすべきだ。対中国支援は、自国への被害拡大の阻止にもつながる。中国も環境に優しいエコカーの開発加速を産業界に促すなど、環境問題に本腰を入れるべき時だ。