「竹島の日」 冷静な交渉で打開策探せ


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 日韓双方が冷静な態度を保ち、静穏な環境で話し合う道はないだろうか。島根県主催の「竹島の日」式典が開かれ、初めて内閣府政務官(島尻安伊子氏)が参加したことで、韓国が強く反発している。

 領土問題は双方のナショナリズムを必然的にあおる。強硬論が幅を利かせがちだ。それは結局、双方に深刻なダメージをもたらしかねない。有効なのは冷静な議論の積み重ね、見解の隔たりを慎重に埋めていく作業だろう。日韓両政府に自制と冷静な議論を呼び掛けたい。
 「竹島の日」式典は島根県側が政府主催の式典とするよう求め、自民党は先の総選挙で政府主催とすることを公約に掲げていた。今回、安倍政権は日韓関係悪化を避けようと主催を見送った半面、政務官参加でバランスを取ろうとした。韓国側は日本が竹島の領土主張をさらに強めたと受け止めており、関係悪化は必至の情勢だ。
 こじれてしまった関係をどう立て直すか。大切なのは、「もう隣人と見なさない」といった感情論を巌に戒めることだ。今一度、問題の出口を冷静に探りたい。
 日本にとり最も必要で、緊急性が高いのは漁業の安全の問題だ。
 1965年に日韓両国は日韓漁業協定を結び、竹島周辺に暫定水域を設け、日韓双方の漁船が出漁できる海域とした。
 留意したいのはこれが、李承晩ライン設定など領有権をめぐる日韓の争いが高じた1950年代の後だったという点だ。主張に隔たりのある領有権問題をいったん脇へ置き、共に利益を得る方策を図った。賢明な論議と評価していい。
 問題は、その後も韓国側がその海域の占拠を続け、日本漁船が完全に閉め出されている点だ。韓国漁船には漁網を断ち切るような危険な漁法、資源枯渇を招きかねない漁法も多く見られる。
 1999年発効の新日韓漁業協定は引き続き暫定水域を「共有の海」としつつ、当局の取り締まりは自国船に限定した。だから韓国側の危ない操業を日本側は制止できない。
 日本がまず取るべきは漁業者の安全であり、協定の順守、「共存共栄」という協定の精神の順守を呼び掛けることではないか。領土の主張の応酬をひとまず休止し、共通の利益を図ることで、静穏な話し合いの環境を整えたい。その上で歴史の共同研究などを進め、本質的な解決策を探るべきだ。