民主党大会 総括の方向が誤っている


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 あいさつに違和感を禁じ得ない。というより、言葉の欠如に違和感を抱く。政権転落後初の民主党大会で海江田万里代表は「政権再奪取を目指す」と述べ、「参院選は党の存亡を懸けた戦いとなる」とげきを飛ばした。

 だが、その前にやるべきことがあるのではないか。まずは約束破りへの真摯(しんし)な反省が先だ。マニフェストという国民との約束をいとも簡単に、一方的にほごにしたが、代表の弁に、その謝罪がないのはどういう了見か。口にしたことを必ず実現する気概がない限り、二度と支持など得られないと知るべきだ。
 党大会で採択された「党改革創生本部第一次報告」は、在沖米軍基地問題について「『普天間』(中略)等、トップによる失敗の連鎖」「普天間に代表される安全保障上の失敗(中略)は国民の不信感をあおる原因となった」と総括した。根本的な認識が誤っていると言わざるを得ない。
 普天間飛行場移設問題混迷の原因は、鳩山由紀夫元首相の失敗、すなわち鳩山氏が「最低でも県外」と言ったことが誤りなのではない。政権交代以前、鳩山氏以外の有力者、例えば岡田克也幹事長(当時)や前原誠司副代表(同)らも同様の認識を示していた。問題は、鳩山氏以外の幹部が、首相を支えて公約を守ろうとせず、政権に就くや否や変節したことにある。
 4年間は消費税率を上げないという公約をあっさり破ったことも、同根だ。遮二無二公約を守ろうとする気概の欠如が問題なのだ。
 官僚丸投げから政治主導、緊密で対等な日米関係、税金の無駄遣いと天下りの根絶、中央集権から地域主権と並ぶ政権奪取時の公約の方向性は、誤ってはいない。それなのに今大会でこれらは軒並み後退した印象を受ける。これでは民主党の存在価値がうせてしまう。
 策定された新綱領にも落胆せざるを得ない。「日米同盟を深化させ」と自民党並みの文言が踊った上、「未来志向の憲法を構想する」と記す。玉虫色の表現で、改憲を明言する自民党への対抗軸になっていない。「第二自民党」そのものだ。
 透明・公正な社会を目指し、分権社会を再構築すると明記した従来の「基本理念」は正しい。所属議員がその理念をきちんと共有していなかったのが問題なのだ。かつての国民の期待は何だったのか、原点に立ち返ってもらいたい。