朴大統領就任 未来志向の日韓関係を


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 韓国で25日、朴槿恵(パククネ)氏が第18代大統領に就任した。韓国初の女性大統領となった朴氏は就任演説で「国民が幸福な、希望の新時代をつくっていこう」と国民に呼び掛けた。経済格差の解消、雇用創出、福祉充実などの内政問題のほか、核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮への対応などについても言及した。直面する諸問題に誠実に取り組み、成果を挙げることに期待したい。

 韓国では財閥系社長出身の李明博(イミョンバク)前大統領がウォン安誘導で大企業の輸出を促進し、財閥系企業が躍進した一方で所得格差が拡大した。非正規労働者は5割を超え、一昨年の自殺率は日本の1・5倍で、経済協力開発機構(OECD)加盟国では最悪だ。経済成長の富を公平に分配する「経済民主化」の推進は待ったなしだろう。
 演説で特に注目されるのは「アジアの緊張を緩和し平和と協力を強めるため、米国、中国、日本、ロシアなど周辺国とより信頼を深めていく」と述べたことだ。挙げられた5カ国は昨年から今回の朴新大統領の就任で新政権が出そろっている。朴氏の演説のように、各国の新たな代表がそれぞれ信頼関係構築に努力してほしい。
 日韓関係をみると、昨年8月に李前大統領が島根県の竹島に韓国大統領として初めて上陸して以来、両国関係は冷え込んでいる。こうした中、支持率低迷を抜け出すため、国民の愛国心に訴える対日強硬策で求心力を回復するような行動は慎んでほしい。
 安倍晋三首相も朴政権との関係について「未来志向で重層的な関係を構築する努力をしたい」との決意を表明している。北朝鮮の核開発問題や拉致問題解決など日韓関係は対立ではなく、強化の方向に進むべきだ。日本も韓国内の植民地支配の歴史などに対する複雑な国民感情を認識し、関係改善の努力を重ねる必要がある。
 2年後の2015年は日韓基本条約の締結から50年を迎える。父である朴正煕元大統領が決断した日本との国交正常化から半世紀の歴史的な節目を長女の朴氏が大統領として迎える因縁深い巡り合わせだ。
 この節目に韓国で反日、日本で嫌韓の空気が充満している事態は何としても避けたい。共存共栄のためにも未来志向の信頼関係を着実に醸成すべきだ。日韓双方が知恵を出し合いたい。