米国防長官承認 民主的安保へ転換の時


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 米上院は新国防長官にチャック・ヘーゲル元上院議員の就任を承認した。ジョン・ケリー国務長官とともにオバマ政権2期目の外交・安全保障政策を担う。ヘーゲル氏には軍の論理を強硬に振りかざすことなく、民意を尊重する民主的安保への転換を強く求めたい。

 議員時代にイラク戦争に反対し、核軍縮政策を唱えるなど穏健派として知られるヘーゲル氏。米議会ではこうした経歴を「急進的すぎる」と問題視する向きもあるが、沖縄側からすれば大勢に流されない同氏の正義感、時代を洞察する力にこそ期待したい。米軍普天間飛行場問題をはじめ沖縄の過重負担解消で手腕を発揮してほしい。
 1996年の普天間返還合意以来、安保政策はジョセフ・ナイ氏やリチャード・アーミテージ氏らジャパンハンドラーと呼ばれる知日派に牛耳られてきた。彼らは「県内移設」を自明のものと捉え、民意軽視の強硬策を繰り返した。これ以上無理強いは許されない。
 県内41市町村の全首長、全議会が普天間の閉鎖・撤去とオスプレイ配備撤回を求めている。県民は、在日米軍専用施設の74%の沖縄への集中、米軍絡みの事件事故、米兵犯罪など過重負担の強制を「構造的差別」と認識している。県民はもう過重負担を甘受しない。日米関係への信頼も瓦解(がかい)寸前だ。
 日米指導層は自らの思考停止が両国の民主主義をも危うくしていると気付くべきだ。軍事・輸送技術の革新、同盟・友好国の連携強化など安保は進化している。森本敏元防衛相ら軍事専門家は普天間移設先が沖縄であることの軍事的合理性を否定している。日米の政治決断により「普天間抜き」の安保体制の運用は十分可能なはずだ。
 米国防総省はアジア太平洋地域重視の新国防戦略に沿って、グアムを新たな軍事拠点にする計画を進める。在沖海兵隊は戦闘部隊を移すグアムを拠点にハワイ、沖縄、オーストラリア北部へ巡回配備するなど分散配置する方針だ。
 へーゲル氏も米軍のプレゼンスがアジア太平洋地域で果たす役割を認める現実主義者であり、今後、米国の軍事的優位性の保持と沖縄の負担軽減が追求されよう。
 日米は惰性に流されず、普天間日米合意見直しを含め安保政策を点検すべきだ。国民の信頼に根差した日米関係再構築で新国務・国防両長官の大局観に期待したい。