女性暴行致傷判決 地位協定真剣に見直す時だ


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 米海軍兵による集団女性暴行致傷事件で、那覇地裁は上等水兵に懲役10年(求刑同12年)、3等兵曹に懲役9年(求刑同10年)の実刑判決をそれぞれ言い渡した。

 判決は「同種の事件でも比較的悪質な部類」と指摘する。被害女性は供述調書で犯行時の恐ろしさ、悲しさ、悔しさや絶望感が今でも残っていることを訴えた。
 被害女性の肉体的、精神的苦痛は察するに余りある。女性に寄り添った実刑判決は評価できる。日米両政府は判決を真摯(しんし)に受け止め、被害女性に謝罪し、補償と心のケアにも誠意を尽くしてほしい。
 「厳しい判決と思っているかもしれないが、被害者の気持ちや裁判員の県民としての気持ち、感情はもっと厳しい」。判決を言い渡した後、裁判員、裁判官からのこんなメッセージが読み上げられた。
 被告らは何の落ち度もない女性の首を強く絞めて押さえ付け、暴行に及んだ。その上、現金まで奪うなど犯行は卑劣極まりない。
 裁判員らは「米兵だからと差別的に見ず、公平に判断した」と述べた。米兵を特別視することなく、犯行の悪質性を重視し判決を下したという。冷静な判断と言えよう。
 量刑判断とは別に、メッセージは不条理な状況に置かれた沖縄県民の率直な気持ちを代弁したものとして評価できる。
 沖縄では、この事件後も米兵犯罪が後を絶たない。メッセージは、沖縄との向き合い方や再発防止策で真剣みが乏しい日米両政府にも向けられたものと言えよう。
 被告らは事件当日、グアムに移動する予定だった。被告の3等兵曹は「暴行しても捕まらないと安易な気持ちで犯行に至った」と述べている。集団女性暴行致傷という人間の尊厳を踏みにじる犯罪の重大性がまったく分かっていない。こうした兵士を生みだした隊員教育にも強い疑問を禁じ得ない。
 あらためて言うが、沖縄は占領地でも植民地でもない。米軍人・軍属は、日米地位協定に守られていることをいいことに「特権」を振りかざしてはならない。
 裁判員らのメッセージを、日米両政府は想像力を働かせて受け止めるべきだ。地位協定の「運用改善」でお茶を濁している間に、事件事故が再発し、日米関係への信頼がむしばまれている。不平等な地位協定の異常性を率直に認め、改定を真剣に検討する時だ。

英文→Sentencing two U.S. Navy sailors for raping Okinawan woman Japan-U.S. Status-of-Forces Agreement needs to be revised