新石垣空港開港 未来切り開く起爆剤に


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 八重山地域住民の長年の悲願だった新石垣空港(愛称・南(ぱい)ぬ島空港)が7日開港する。2日は現地で開港式典が開かれた。事業着手から37年。曲折を経て開港にこぎ着けた地元住民や関係者の労苦を心からねぎらい、共に祝いたい。

 振り返れば、開港までの歩みは苦難の連続だった。建設候補地の選定は、開発か自然保護かをめぐって地域社会を分断するなど二転三転した。
 復帰後、本土との格差是正を合言葉に社会資本整備にまい進した沖縄社会や県当局に対し、新石垣空港建設事業は自然環境に配慮した公共事業の在り方を厳しく問い掛けた。サンゴ礁保全、赤土流出対策、地下水保全、貴重動植物の保全-。換言すれば、開港までの歩みは、県の自然保護行政の歩みと軌を一にすると言っても過言ではないだろう。
 とりわけ、最初に建設地とされた「白保海上案」は、埋め立て予定地のサンゴ礁が世界的な注目を集めた。学者や民間団体の調査で、白保のアオサンゴ群落が北半球最大・最古で、非常に価値が高いことが判明したためだ。地元住民にとって大事な海は、世界的な財産として人類が守るべき存在であることを国内外に知らしめた意義は計り知れない。
 建設地は、最終的に地元住民を中心とする位置選定委員会が「カラ岳陸上」に決定した。住民主導で合意形成を最優先する民主的手続きは、後に「石垣方式」と呼ばれ、全国的なモデルともなった。地域住民の英知を誇ると同時に、地域の苦悩や苦心、苦渋の選択があって開港の日を迎えられることを、深く心に刻みたい。
 今後に目を向ければ、2千メートル滑走路を有する新空港開港の波及効果への期待は大きい。これまで就航できなかった本土直行便や、冷蔵コンテナも搭載可能な中型ジェット機の就航で、輸送可能な人員や貨物量が大幅に増えるからだ。
 八重山地域の観光入域目標は過去最高の80万人と設定された。鮮度の高い農水産物の県外出荷も計画されよう。関係者には地域の多種多様な魅力を掘り起こし、積極的に内外に発信することで、地域経済発展の道を果敢に切り開いてもらいたい。
 今後は国際線の就航増も予想される。国内でアジアに最も近いゲートウエー(玄関口)として、八重山地域にとどまらず沖縄観光の起爆剤となることを期待したい。