琉球史教育 異文化理解と国際平和の礎


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 「賢者は歴史に学ぶ」との格言もあるように、画期的で意義深い取り組みだと歓迎したい。

 世界遺産の中城城跡を擁する中城村の教育委員会は、琉球史の科目を2014年度から小学校に設置する。年間15時間程度から始め、最終的に35時間(週1回)の授業を目指す。15年度からは中学校にも拡大する予定という。
 学校独自の時間割を作成できる「教育課程特例校制度」を活用する方針だが、地域史学習のための科目設置は全国でもまれで琉球史は初となる。
 郷土の歴史や自らのルーツを知ることはアイデンティティー確立に不可欠であり、ひいてはあらゆる民族や文化それらの歴史を尊重する国際的な人材の育成にも欠かせない。歴史を学ぶことで異文化理解と国際交流の深みが増し、平和な国際社会を築く礎にもなる。
 村教委が「郷土の歴史を知る国際的な人材を育成する」との狙いを掲げるのは、そうした観点に立脚しているからだと理解する。
 一方、県内の子どもたちへの琉球・沖縄史の授業は、平和教育や社会科などで触れる程度で圧倒的に不足しているのが実情だ。熱心な教員もいるがまだまだ少ない。
 沖縄歴史教育研究会が県内の公立高校2年生を対象に昨年4月に実施した調査では、本土に復帰した1972年5月15日を正確に答えたのは15%にとどまり、薩摩の琉球侵略に関する5択の質問で、1609年と正答したのはわずか8%にすぎなかった。
 米軍基地の過重負担に苦しむ沖縄の現状は突然もたらされたものではない。薩摩の侵攻、「琉球処分」、沖縄戦、戦後27年間の米軍統治、本土復帰など連綿と続く歴史の積み重ねの結果だ。そうした歴史を知ることなく、沖縄の現状や課題を正確に認識し、解決策を見いだすことなど到底不可能だ。
 沖縄自治研究会は昨年12月、「琉球・沖縄史」を県立高校で必履修科目として設置するよう県議会に陳情したが、県や県教育委員会は真剣に受け止める必要がある。各市町村教委も中城村に続きたい。
 沖縄が世界に開かれた交流拠点を目指す上でも、次代を担う子どもらが小中高校と体系的に沖縄の歴史を学ぶ意義は計り知れない。
 歴史を学んで初めて地域の文化や伝統の価値を認識でき、次世代への継承も可能になることを肝に銘じたい。