中国全人代開幕 外に透明化、内に民主化を


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 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が開幕した。17日の閉幕までに習近平国家主席、李克強首相を選出し「習-李体制」が本格始動することになる。

 急速な経済成長の弊害が拡大する中、軍事力強化を続ける大国に向ける国際社会の視線は厳しさを増している。山積する課題の解決にどう取り組み、国際社会でどのような責任と役割を果たしていくのか、新体制の指導力が問われている。
 温家宝首相は政府活動報告で、2013年の国内総生産(GDP)成長率目標を昨年同水準の7・5%に設定することを表明。「大気や水、土壌など環境汚染問題の解決」に努めると強調し、高成長路線から持続可能で健全な経済発展路線へ修正を図る考えを示した。
 微小粒子状物質「PM2・5」を主原因とする大気汚染は経済成長至上主義が招いたひずみの象徴だ。汚職の横行や都市と農村部の経済格差など、社会的矛盾による不満や不安は体制の安定を脅かすほどに鬱積(うっせき)しているように映る。
 国際社会が経済依存度を深める中国社会が混乱すれば、及ぼす影響も大きい。経済成長と環境保全、経済格差是正などの取り組みをバランスよく進める必要があり、指導部の責任は重大だ。
 大気汚染同様に視界不良なのが国防費だ。13年度予算案の国防費は前年度実績比10・7%増の7406億2200万元(約11兆1千億円)を計上、3年連続で2桁増となった。10年間で3・5倍膨張しているという。ほかにも軍事関連予算があると、かねて指摘されており、一層の透明化が必要だ。
 傅瑩報道官は全人代前日の会見で「中国の国防力強化は地域のさらなる安定や世界平和にプラスになる」と強調したが、疑問だ。むしろアジア諸国の懸念や警戒を増幅させているのではないか。中国政府は国際社会の厳しい見方を真摯(しんし)に受け止め、国防費の削減にも努めるべきだ。
 ただ温首相は報告の中で、尖閣問題への直接的な言及はしなかった。関係修復への一定の配慮とみられ、日本政府も慎重に対応すべきだ。
 チベット自治区や新疆ウイグル自治区に対する弾圧、人権活動家への強硬姿勢などに対しても国際社会の目は厳しい。国民の権利意識も高まっている。中国政府は国内外の懸念に応え、大国にふさわしい民主化を進める必要がある。