本土で初訓練 沖縄の痛み共有する契機に

 米海兵隊普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが初めて本土での飛行訓練を始めた。山口県の岩国基地に降り立つ前、和歌山と四国3県を通る飛行経路下にある高知県の山間地などで、低空飛行が確認された。

 レーダーによる捕捉を避けるため、谷間を縫うように飛ぶ訓練形態は、危険性が高い。徳島県の飯泉嘉門知事は「不安や懸念が払拭(ふっしょく)されない中での訓練強行は遺憾」とコメントした。本土でも自治体を中心に不安の声が高まるのは当然だ。
 だが、沖縄県民の思いは複雑だ。今回の訓練は3日間だが、沖縄では年中、オスプレイが傍若無人に飛び交い、住民生活に深刻な影響を及ぼしている。この日も県内ではオスプレイが訓練飛行した。
 本土での訓練は、本土の国民が、安全保障の負担を負う当事者意識を持つことができるかを問い直している。岩国基地前では、市民団体が「岩国にも、沖縄にもオスプレイはいらない」と訴えた。
 過重に基地が集中する沖縄の痛みを共有し、日本全体で分かち合う機運が高まり、撤収要求のうねりにつながることを望みたい。
 普天間への配備から5カ月余がたつ。安全性への懸念が付きまとう中、水ボトルを落とす事故が起きても詳しい原因は分からない。
 普天間飛行場周辺で市街地上空の飛行が常態化するなど、日米が沖縄への配備を前に声高にPRした「安全宣言」と称する合意事項は、全く守られていない。
 昨年6月、海兵隊の環境審査書が全国各地で飛ぶ計画を公表し、「沖縄の問題」だったオスプレイへの不安は全国に飛び火した。だが、沖縄だけで訓練される間に、全国的な関心は冷めていった。それは、1月末の県内41全首長による東京要請行動に対する本土メディアの冷淡な報道に表れた。
 政府内には、米側から低空飛行訓練の通告があったことを「異例」と評価する向きがあるが、弱腰すぎないか。普天間に配備された12機中、たった3機の訓練移転を、臆(おく)することなく「沖縄の負担軽減」と言い張る印象操作も際立つ。
 米本土では、住民の反対で低空飛行訓練が延期されている。なぜ、日本ではやすやすと実行できるのか。既成事実化は許されない。国民の安全確保に背を向け、米軍に従う政府の姿を、本土から、沖縄から厳しく問わなくてはならない。



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