12年衆院選違憲 小選挙区制の抜本見直しを


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 人口比例に基づかない区割りで最大2・43倍の「1票の格差」を是正せずに行われた2012年衆院選について、東京高裁が「違憲」判決を下した。選挙無効の訴えは認めなかった。

 09年衆院選について最高裁大法廷は11年3月、47都道府県にあらかじめ1議席を配分する「1人別枠方式」を否定し、最大格差2・30倍の区割りを違憲状態と判断。昨年11月に小選挙区を「0増5減」する選挙制度改革関連法が成立したが、12年選挙には適用されず格差は拡大した。
 今判決は違憲状態を指摘されながら抜本改革を怠り、憲法の「法の下の平等」に反する事態を増幅させた国会の不作為を叱責(しっせき)するものだ。各党に猛省を促したい。
 国会論議は目下、自民党が制度改革案に現行の比例代表11ブロックを八つに再編する内容を盛り込む方針を固め、比例代表の定数(180)を30削減し、残り150のうち30議席を得票率2位以下の政党に優先配分する案と連動させる方向だ。ブロックの規模が大きくなるほど「死に票」が減ると見込まれる。問題は中小政党が納得し得る案かどうかだ。
 与党公明党の山口那津男代表ですら制度改革について「国民は選挙のたびに大きく議席が振れることに強い疑問を持っている。より民意を反映できる制度を考えれば、比例代表の定数を削減するのは国民の意向に逆行する」と慎重姿勢で、かつての中選挙区制度も排除すべきではないとの立場だ。
 小選挙区制度は政権交代が可能な二大政党制を目指したが、現状は中小政党が乱立している。中小政党や国民の間ではかねて、この制度は「日本の政治風土になじまない」という指摘も少なくない。民意を生かすためにも「死に票が多い」とされる小選挙区制を、もはや見直しの聖域とすべきではない。
 地域主権や道州制導入が叫ばれる時代に東京一極集中、中央集権など都市中心の価値観で選挙制度を見直せば、反動で地方は疲弊しかねない。
 昨年11月に成立した改革関連法で地域の声、少数意見を国政に反映させる利点がある「1人別枠方式」が事実上廃止されたが、これにより地方が置き去りにされてはならない。「0増5減」に基づく区割り作業では、法の下の平等と少数意見の尊重を斟酌(しんしゃく)して、慎重な制度設計に努めてもらいたい。