東日本大震災2年/犠牲の連鎖断ち切ろう 多様な支援届け続けたい


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 あの日、恐怖と寒さに耐え、過酷な環境で懸命に生き抜いた命を今、途絶えさせてはならない。底知れぬ悲しみの中をさまよった人たちを、今、絶望のふちにとどめてはならない。

 東日本大震災からきょうで2年がたつ。2年もたつというのに、復興はなお遠く、それどころか震災関連死、原発事故関連死が今も続いている。われわれはそんな社会に住んでいるのだ。
 この耐えがたい現実を直視しなければならない。そして深く恥じなければならない。一刻も早く犠牲の連鎖を断ち切るべく、多様な支援を粘り強く届け、被災地をしっかり支える社会にしたい。

 機能不全国家

 震災の死者は1万5880人に達し、2694人の行方が分からない(2月27日現在)。避難者は約31万5千人に上り、今も人口流出が続く現実に胸がふさがる。
 それにしても、この国の機能不全には憤りを禁じ得ない。
 震災発生の時点で、尋常でない努力と緊急の予算が必要、と誰しも思ったはずだ。こんなときのためにこそ国債の仕組みがある。ところが当時の民主党政権や自民党から聞こえてきたのは、財源への懸念と称して増税にこだわり、増税前の緊急対策にストップをかけようとする声ばかりだった。
 片山善博元総務相が閣議で「救急病院に重篤な患者が運び込まれているのに、治療費の返済計画を家族が提出するまで待たせておけ、というようなもの」と批判したが、同調者はいなかったと聞く。閣僚がみな、まるで財務官僚の操り人形だったのではないか。
 その結果、補正予算成立は遅れに遅れ、震災から7カ月も後だった。災害公営住宅着工は2年たっても予定の1割に満たない。そんな国がほかにあるか。
 復興予算の使い回しも明らかになった。被災地に集中投下すべきもののはずだ。こんなときにこそ求められる「事業仕分け」はまるで機能しなかった。
 官僚支配にチェックが働いていない。「政治主導」はどこへ行ったのか。復興の遅れのとがめは真っ先に機能不全の政治が負うべきだ。
 被災地の自治体は職員不足に苦しんでいる。集落移転や区画整理で土地交渉などに、きめ細かな実務が求められるから、人手不足は復興の遅れに直結しかねない。全国の自治体が応援を派遣しているが、各県とも実務能力の高い職員は貴重であり、拡充は難しかろう。政府は予算を大胆に組み、被災地の職員増を図るべきだ。

 防災の先進地に

 なるべく早く高台移転を実現したい。合意形成に時間がかかる現行の法制度の改善も検討すべきだ。平地が少ないリアス式海岸の地域では、緑地の減災効果を生かすといった多重防御も一案だ。多様な防災・減災対策を進め、東北を世界でも最も先進的な防災・減災のモデル地域にしたい。
 復興に求められるのは何よりも人だ。人が住み続けるには職の創造・確保が重要となる。東北3県では震災で8万人が離職、64万人が休職し、漁業者は2万3千人から9千人に激減した。何としてもこの流れを反転させたい。
 震災で「東北」の名は世界に知られた。痛切な体験を経た人々こそ、高い水準の災害対策を追い求めるはずだ。それを復興と自立に生かせないだろうか。
 例えば、避難所で提供される非常食は炭水化物に偏りがちだった。その経験を踏まえ、他の栄養素を確保した非常食を開発する。手回し充電ラジオや携帯トイレなど、被災地で本当に求められた防災グッズを開発する。被災体験をブランド力に転化すれば、こうした防災・減災関連ビジネスの集積を可能にするのではないか。
 復興は地元の英知が鍵を握る。地域主権を東北から大胆に進め、地元主導で政策を設計し、官民挙げてそれを資金面で手厚く支援する。政治もせめてそんな仕組みの構築に努力すべきだ。