休戦協定白紙化 外交のテーブルに戻れ


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 北朝鮮は自らを窮地に追い込むだけの、軍事的威嚇、挑発を即刻やめ、国際社会と共に歩むべきだ。

 朝鮮労働党の機関紙、労働新聞が11日、「まさに今日から朝鮮戦争休戦協定が完全に白紙化された」と物騒な宣言をし、「鋼鉄の砲身と戦略ロケット(ミサイル)が発射の瞬間を待っている」と米韓を威嚇する記事を掲載した。
 朝鮮戦争は、国際法上は今も継続中だ。実際の戦闘がないのは休戦協定という歯止めがあるからだ。
 休戦協定は1953年7月27日に、米軍を中心とする国連軍と北朝鮮の朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者によって結ばれた。
 同じ民族で殺し合う最悪事態を回避する上で、休戦協定が果たしてきた役割は大きい。その一方的な白紙化は、自殺行為だ。国際法の精神にも反し、許されない。
 朝鮮半島の緊張の原因は、北朝鮮にある。北朝鮮が3度目の核実験を強行しなければ、先の国連安全保障理事会の制裁強化決議も必要なかった。決議に背を向け、核先制攻撃を示唆して他国を威嚇したり、休戦協定の白紙化を宣言したりするのは常軌を逸している。
 北朝鮮の友好国中国は従来、国連決議のたびに決議履行に非協力的と国際社会の批判を浴びてきたが、今回は制裁強化決議に基づき税関や交通、金融などの関係機関に決議履行を指示しているという。中国は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮指導部の強硬姿勢を懸念、北朝鮮の国民生活に人道上の影響が出ない範囲で決議を履行する方針とされる。北朝鮮は中国の変化とも真剣に向き合うべきだ。
 万が一、戦争再燃となればお年寄りや女性、子どもなど社会的弱者が真っ先に犠牲となることは歴史の証明するところだ。朝鮮半島をそんな修羅場にしてはならない。
 北朝鮮は深刻な状況が伝えられる国民の暮らしや経済を立て直すためにも、核カードをちらつかせる「瀬戸際外交」から国際協調路線に転換するのが賢明だ。
 北朝鮮は、休戦協定の平和協定への転換を外交目標に掲げる。本気でそれを実現したいのなら、まずは核の開発・保有を放棄し、国際社会の信頼を回復することだ。
 米国など核保有国もあらゆる紛争の平和的解決をうたう国連憲章の精神にのっとり核軍縮・廃絶への道筋を示すことで、北朝鮮を外交テーブルに引き戻してほしい。