ストーカー2万件 法改正し「人命軽視」改めよ


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 相談をためらっている潜在的な被害者が、まだまだ多いということだろう。警察が把握した昨年1年間の全国ストーカー被害が、前年比36・3%増の1万9920件で、統計を取り始めた2000年以降最多となったことだ。摘発件数は1855件で、前年の2倍近くに達している。

 このうち、殺人事件(未遂を含む)は3件あった。加害者の行動は、時がたつほどにエスカレートするのが常だ。異常と感じたら、直ちに警察に通報することが重要だ。
 警察庁によると、ストーカー被害の認知件数は08年以降5年連続で1万4千件を超えている。しかし、「警告」や「禁止命令」の対象となったのは1割にも満たないのが現状だ。
 こうした警察の緩慢な対応に、被害者や家族から厳しい批判が出ている。当然だ。どの案件も、被害者や家族にとっては、身の危険を感じる深刻な状態だろう。増加傾向にある相談に適切に対応できているか、検証が必要だ。
 11年に起きた長崎県西海市の2女性殺害事件では、家族が千葉、三重、長崎の3県警に何度も相談したにもかかわらず、たらい回しされた揚げ句の悲劇だった。
 昨年11月に神奈川県逗子市で発生した女性殺害事件では、被害者から結婚後の名字や住所などを隠すよう要望されていたが、逮捕状に記載された名字や市名を読み上げたことが、住所が特定される原因となった可能性がある。
 こうした不適切な対応が繰り返されるのは、警察内部の論議だけで是正するのは無理があるということの証左だろう。過去のストーカー殺人の遺族が求めているように、第三者機関で問題点を検証し、警察官一人一人のストーカー被害への認識や、捜査体制を改めていく必要があろう。
 一方で、法の不備もある。神奈川県の事件では、被害者の女性に大量に送りつけられたメールが、ストーカー規制法の対象外だったため摘発できなかった。00年施行のストーカー規制法は、施行後5年の見直し規定があるにもかかわらず一度も改正されていない。各関係機関は「人命軽視と怠慢」を指摘されても仕方ないだろう。
 被害者や家族の声を直接聞いた上で、ドメスティックバイオレンス(DV)防止法とも連動した、実効性ある法改正を求めたい。