イラク戦争10年 政府は支持理由説明せよ


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 イラク戦争の開戦から20日で10年を迎えた。大量破壊兵器の存在を理由に米英などによる武力行使で始まったこの戦争では、フセイン大統領という独裁を倒すことはできたが、開戦理由の大量破壊兵器は発見されなかった。宗派間対立を伴う内戦状態に陥り、10万人以上とされるイラク住民の命を奪った戦争は正当化などできない。

 開戦前、フランス、ドイツ、ロシア、中国などが攻撃に強硬に反対し、国連の査察団による査察継続を要求していた。日本も当初は無条件の査察受け入れを働き掛け、武力行使の前に外交的手段を尽くすべきとの立場を取っていた。
 しかし米国が武力行使に踏み切る姿勢を示した途端、当時の小泉純一郎首相は一転して米国の方針を支持すると表明した。一体、日本がなぜ武力行使を容認する方向にかじを切ったのか。10年を迎えた今、政府は国民に十分な説明をするべきではないか。
 昨年12月、外務省は「対イラク武力行使に関する我が国の対応」と題する検証結果を公表した。2002年初めから03年3月の開戦までの期間についての外務省の対応について「概ね適切な対応がなされた」と結論付けている。「官邸をはじめ、政治サイドに情報を提供し、随時必要な指示を得、また政治的判断を仰いだこと」などを理由に挙げている。
 ただ検証結果では「日本政府が米英等の武力行使を支持したことの是非自体について検証の対象とするものではなく」と断っている。
 あぜんとする検証と言わざるを得ない。日本が武力行使を支持した理由とその是非という国民が最も知るべき事柄を検証から外しているのだ。しかも公表されたのは要約の4ページだけで、全文は公表されていない。その理由を「各国との信頼関係を損なう恐れの高い情報等が含まれている」としているが、本当は外務省にとって都合の悪い記述があると疑いの目を向けざるを得ない。
 在沖海兵隊や嘉手納基地所属の戦闘機も参戦した。沖縄国際大学に墜落したCH53D型輸送ヘリもイラクに派遣予定だった。
 開戦の日、沖縄戦で家族10人を失った女性は「戦争に関係のない女や子ども、老人たちが犠牲になるのか。耐えられない」と話した。多くの住民の命を奪ったこの戦争を支持した日本政府は、その理由を国民に説明する必要がある。