福島原発停電 拭い難い不安と不信残る


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 東京電力福島第1原発で18日に停電が起こり、1、3、4号機の使用済み燃料プール代替冷却システムなどが停止した。

 完全復旧に向けて懸命な作業が続けられた。今回の事態は、事故から2年が経過した現在も福島第1原発が不安定な状態であることを思い知らせ、国民の間に横たわる原発への不安感と東電への不信感を、拭い難いものにした印象がある。
 停電後も、原子炉内の燃料が溶け落ちた1~3号機の原子炉への注水は維持できて、周辺のモニタリングポストの放射線量に目立った変化は見られなかったという。
 しかし、1~4号機の使用済み燃料プールには3千体以上の燃料が残っているほか、冷却システム復旧のめどが立った共用プールにも燃料6377体が保管されており、停電が長引けば深刻な事態に発展することも想定された。
 冷却システムの停止で、13・9~25度だった4号機などのプールの水温は徐々に上昇したことが確認されたという。保安規定上の管理温度の上限は65度とされているが、最も水温が高い4号機では、早ければ4日余りで上限に達する危険性もあったのだ。
 停電の原因について、東電は仮設の配電盤に不具合が生じた可能性があると説明している。早急に究明して説明責任を果たし、再発防止に全力を挙げる必要がある。
 廃炉に向け、4号機の燃料プールからは今秋にも燃料取り出し作業が始まる予定だっただけに、今回の事態は廃炉への道のりの厳しさをあらためて示した形だ。
 東電や政府は、東電や原発に対する国民の信頼が根本から揺らいでいることを肝に銘じるべきだ。
 東電をめぐっては、国会が設置した事故調査委員会に対して原発事故発生当時に事実と違う説明をし、事故調による現地調査を断念させた経緯があったことも最近分かり、隠蔽(いんぺい)体質が問題になった。
 今回の停電についても、公表遅れを指摘する声もある。すぐに復旧するから公表しなくてもいい、といった甘い判断はなかったか。こういった不信感を払拭(ふっしょく)できなければ、徹底した安全対策も構築できまい。
 また同様なことが繰り返されるのか、不安はいつまで続くのか。今回の事態に、国民の多くがそう感じたのではないか。原発に依存することのリスクの大きさをもまた、再認識せざるを得ない。