中東和平 2国家共存へ国際支援を


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 オバマ米大統領は就任後初めてイスラエルを訪問した。ネタニヤフ首相と会談し、足並みをそろえてパレスチナ和平に取り組む姿勢を強調した。さらにオバマ氏はパレスチナ自治政府のアッバス議長との共同記者会見で、パレスチナ国家樹立に取り組み、イスラエルとの2国家共存の実現を目指すと訴えた。オバマ氏訪問で中東和平交渉の進展につながることを期待したい。

 和平交渉はオバマ政権発足後、2010年に再開されたが、すぐに頓挫し、2年以上も中断している。最大の理由はイスラエルが東エルサレムを含むヨルダン川西岸での入植地を拡大しているためだ。パレスチナはこれに強く反発している。イスラエルの行為は国際法違反とする国連安保理決議もある。イスラエルは入植活動の凍結・停止を即時実行すべきだ。
 イスラエル国内でも変化が起きている。今月18日に右派と中道による新たな連立内閣が発足した。公約の第一に和平推進を掲げる中道新党ハトヌアのリブニ党首が法相に就任し、パレスチナ問題も担当する。パレスチナ側も好意的に受け止めているとみられ、国際社会としても問題解決を後押しする必要がある。
 和平交渉再開への機運が高まるが、一方で新政権にはパレスチナに強硬な政党も加わっており、打開策を打ち出せるかどうかは予断を許さない側面も残っている。
 この地域で緊張が高まれば、世界の平和と安定が大きく損なわれる。中東地域の石油埋蔵確認量は09年統計で世界の59・9%を占めており、中東の不安定化は世界経済を直撃するからだ。和平の進展で軍事的、政治的緊張を緩和することは日本にとっても死活問題であり、積極的に関与すべきだろう。
 イスラエルとパレスチナ国家が平和で安全に共存する2国家解決を進めるには直接交渉が重要となる。信頼関係を構築するためにも、イスラエルは入植を凍結して交渉に向けて歩み寄る必要がある。また双方とも暴力行為を厳に慎み、報復の連鎖を断ち切るべきだ。
 オバマ氏はエルサレムで大学生を前に「ユダヤ教徒もイスラム教徒もキリスト教徒もみんながこの聖地で平和と繁栄の中、生活できる未来を目指そう」と演説した。進むべき道に向かって各国が今こそ力を結集するべきだろう。