空手道会館 世界に誇れる発信拠点に


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 県は「空手道会館(仮称)」の建設地を、豊見市の豊見城城址公園跡地にすることを決定した。

 複数の候補地の中から、那覇空港や県立武道館からの交通の利便性、城跡という歴史性や景観の良さなどの立地条件を総合的に判断して決めたという。
 空手は沖縄の貴重な文化遺産であり、世界的な広がりを持つ。それを継承、発展させていく拠点の整備は関係者の念願だっただけに、今回の決定を契機に整備が着実に進むことを期待したい。同時に、2003年に閉鎖されて活用法が課題となっていた豊見城城址公園跡地も、空手道会館を核として環境整備が図られ、県民に親しまれる場所として再生してほしいと思う。
 県は公園跡地を所有する業者(鹿児島県)から一括交付金で土地を購入するという。会館の敷地面積は1万平方メートル、延べ床面積4500平方メートルを基本とし、展示施設や資料閲覧室、顕彰碑などのシンボル施設などを検討している。14年度末の完成を目指す。
 県議会が、10月25日を「空手の日」として宣言し決議したのは05年。対立や分裂もあった沖縄空手界が、新しい統一組織「沖縄伝統空手道振興会」(会長・仲井真弘多知事)を結成したのは08年2月のことだ。
 振興会はその後、世界大会の開催(09年)、空手道会館建設、学校カリキュラムへの空手導入を三大目標に取り組んできた。
 建設場所が決まったことで、今後は空手道会館の中身をどうするかが大きな課題となる。流派や型の違いなどもある。関係者にはいろんな思いや構想があろう。
 県は来年度から管理運営の在り方や展示内容の検討を進めるが、関係団体や研究者らと綿密に意見交換し、空手発祥の地として世界に誇れる発信拠点にしてほしい。
 豊見城市も空手道会館を中核に城壁や城門などの復元を含め、公園跡地の整備を図る方針という。一方、ラムサール条約登録湿地の漫湖にも近い城址公園跡の南側では、南部広域圏南斎場の建設が始まっている。今後、関連道路整備や空手道会館建設が進むことで、周辺環境への影響を懸念する声もある。
 自然や史跡を損ねては、空手の拠点としても観光振興上も好ましくない。県や市はそのことをしっかり踏まえ、整備に当たっては環境に十分配慮してもらいたい。